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毛の生えた女(アブルッツィのマリア・ヴェントゥーラと彼女の夫と息子)
(La Mujer Barbuda (Maddalena Ventura degli Abruzzi con su marido e hijo)) 1631年
196×127cm | 油彩・画布 | マルレ公爵家財団(トレド) |
17世紀ナポリ派の巨匠フセペ・デ・リベーラが手がけた、西洋絵画史上、最も特異な作品のひとつ『毛の生えた女(アブルッツィのマリア・ヴェントゥーラと彼女の夫と息子)』。本作は37歳で顎と口に髭が生え出したと言うナポリ王国アブルッツィ出身の女マリア・ヴェントゥーラが、第三代アルカラ公爵に謁見した際、その珍しさに公爵が感激し、宗主国であったスペイン国王フェリペ三世へ知らせる為、リベーラへ依頼され制作された驚嘆に値する肖像画である。本作で描かれるマリア・ヴェントゥーラの姿は52歳の頃で、その腕に末子を抱き授乳しており、傍らには二人目の夫フェリックスが寄り添っている。また碑石は本作が制作されるまでの経緯が記されているほか、碑石の上の糸車は女性を暗示する物として、蝸牛は両性具有(男女の両性を備えた存在)の象徴として描かれている。本作ではマリア・ヴェントゥーラを始めとした登場人物の姿を照らすリベーラ独特の劇的な光と共に、深く厳しい明暗対比を用いた自然主義的な表現が強く示される典型的な作品としても知られており、その表現であるからこそ、見るからに男性の面持ちをしながらも、丸々とした乳房を出し我が子へ授乳するマリア・ヴェントゥーラの女性や母性を示す姿に、観る者は戸惑いを感じながらも、強く惹かれるのである。
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