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老婆に正体を見破られるフィロポエメン
(Recognition of Philopoemen) 1610年頃
201×311cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀フランドルの画家フランス・スナイデルスの代表作『老婆に正体を見破られるフィロポエメン』。同時代最大の巨匠ルーベンスとの共作である本作に描かれるのは、異論もあるが、帝政期ローマのギリシア人著述家プルタルコスの著書から、ギリシアのアカイア同盟将軍フィロポエメンが老婆にその正体を見破られる場面≪老婆に正体を見破られるフィロポエメン≫とする説が有力視されている。本作でスナイデルスは狩猟された野鳥や獣、玉葱、南瓜、白菜等の野菜類や果物など、画面の大部分を占める静物を担当(ルーベンスは登場人物を担当)しており、その表現は静物でありながら記念碑的かつ劇的である。特に画面中央の机上に横たわる、狩猟された白い鷲鳥を始めとした様々な野鳥の描写は、画家が類稀な才能を発揮した写実性によって、極めて正確かつ圧倒的な質感で描写されており、観る者の目を奪うばかりである。また画面構成においても、右上の玉蜀黍から、積まれる野菜類、羽を広げられ横たわる鷲鳥、机から垂れ落ちる孔雀の尾、と対角線上に静物が配置されており、画面内へ自然な流れを示している。このようなバロック様式的な劇性を秘めたモニュメンタルな画面構成と描写による静物の表現は、スナイデルスの手が入る作品の大きな特徴なのである。
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