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homeページCollection常設展示バロック美術
Introduction of an artist(アーティスト紹介)

フランス・スナイデルス(スネイデルス) Frans Snyders
1579-1657 | フランドル | バロック

17世紀にフランドルで活躍した画家。自然、動物、植物、食物、生活用具など静物描写に才能を発揮し、同時代の絵画様式の流動を取り入れながら精力的に作品制作をおこなう。また巨匠ルーベンスヴァン・ダイクなど同時代に活躍していた画家らとの共作を多数残しており、この頃の画家同士の繋がりを研究する上で欠かせない画家でもある。初期ネーデルランド絵画最後の巨匠ピーテル・ブリューゲル(父)の長男ピーテル・ブリューゲル(子)に師事し、修行時代を過ごしたと推測される。その後ピーテル・ブリューゲル(父)の次男ヤン・ブリューゲルに多大な影響を受けながら静物画家としての才能を開花させ、1602年に独立。以後、ローマ滞在などイタリア各地を遍歴し、1608年ヤン・ブリューゲルの紹介によりミラノ大司教フェデリコ・ポロメオ枢機卿と知り合う。翌年帰国すると、イタリアで培った経験やルーベンスの影響を受けながら、当時の静物画とは一線を画す記念碑的な大規模静物画を制作するほか、他の画家との共作を次々と制作。そのモニュメンタルな作風はスペイン国王フェリペ4世など王侯貴族らの支持を得、同時代のフランドルを代表する画家としての地位を確立した。1657年死去、享年78歳。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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老婆に正体を見破られるフィロポエメン
(Recognition of Philopoemen) 1610年頃
201×311cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

17世紀フランドルの画家フランス・スナイデルスの代表作『老婆に正体を見破られるフィロポエメン』。同時代最大の巨匠ルーベンスとの共作である本作に描かれるのは、異論もあるが、帝政期ローマのギリシア人著述家プルタルコスの著書から、ギリシアのアカイア同盟将軍フィロポエメンが老婆にその正体を見破られる場面≪老婆に正体を見破られるフィロポエメン≫とする説が有力視されている。本作でスナイデルスは狩猟された野鳥や獣、玉葱、南瓜、白菜等の野菜類や果物など、画面の大部分を占める静物を担当(ルーベンスは登場人物を担当)しており、その表現は静物でありながら記念碑的かつ劇的である。特に画面中央の机上に横たわる、狩猟された白い鷲鳥を始めとした様々な野鳥の描写は、画家が類稀な才能を発揮した写実性によって、極めて正確かつ圧倒的な質感で描写されており、観る者の目を奪うばかりである。また画面構成においても、右上の玉蜀黍から、積まれる野菜類、羽を広げられ横たわる鷲鳥、机から垂れ落ちる孔雀の尾、と対角線上に静物が配置されており、画面内へ自然な流れを示している。このようなバロック様式的な劇性を秘めたモニュメンタルな画面構成と描写による静物の表現は、スナイデルスの手が入る作品の大きな特徴なのである。

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【全体図】
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縛られたプロメテウス
(Der gefesselte Prometheus) 1610-1611年頃
243×210cm | 油彩・画布 | フィラデルフィア美術館

17世紀にフランドルで活躍した画家フランス・スナイデルスと巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスとの共同制作品の中でも特に知られる代表作『縛られたプロメテウス』。ルーベンスが当時のイギリス外交官サー・ダッドリー・カールトンと交わした手紙の中で本作について記しているため、共作であることが判明した本作に描かれるのは、神話で泥土から人を創造し、人間を庇護したとされる巨人ティタン神族のひとりプロメテウスが、主神ユピテルが人間から火を奪おうとしたことに反抗し、ウルカヌスの鍛冶場から火を隠し人間へ与えた為に、主神ユピテルの怒りを買い、プロメテウスを捕らえカウカソス山頂の岩へ鎖で縛り、大鷲に肝臓を永久に啄ばませさせた(夜になると肝臓は元に戻ったとされる)という逸話≪縛られたプロメテウス≫で、やや極端な短縮法でルーベンスが苦痛に歪むプロメテウスを迫力豊かに描いたのと競うかのように、スナイデルスは得意とした極めて写実的な描写を用い大鷲の存在感を強めることによって、高度な融合性をもたらしたのである。スナイデルスは、ルーベンスヤン・ブリューゲルとの間に築かれた親密な友好関係とは異なり、あくまでも画家としての共作であるにも関わらず、本作にこのような非常に高い融合性を示していることは、画家のルーベンスから受けた影響と豊かな画才による部分が大きい。なお本主題≪縛られたプロメテウス≫後、英雄ヘラクレスが大鷲を退治し、プロメテウスは救われたとされている。

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