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縛られたプロメテウス
(Der gefesselte Prometheus) 1610-1611年頃
243×210cm | 油彩・画布 | フィラデルフィア美術館 |
17世紀にフランドルで活躍した画家フランス・スナイデルスと巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスとの共同制作品の中でも特に知られる代表作『縛られたプロメテウス』。ルーベンスが当時のイギリス外交官サー・ダッドリー・カールトンと交わした手紙の中で本作について記しているため、共作であることが判明した本作に描かれるのは、神話で泥土から人を創造し、人間を庇護したとされる巨人ティタン神族のひとりプロメテウスが、主神ユピテルが人間から火を奪おうとしたことに反抗し、ウルカヌスの鍛冶場から火を隠し人間へ与えた為に、主神ユピテルの怒りを買い、プロメテウスを捕らえカウカソス山頂の岩へ鎖で縛り、大鷲に肝臓を永久に啄ばませさせた(夜になると肝臓は元に戻ったとされる)という逸話≪縛られたプロメテウス≫で、やや極端な短縮法でルーベンスが苦痛に歪むプロメテウスを迫力豊かに描いたのと競うかのように、スナイデルスは得意とした極めて写実的な描写を用い大鷲の存在感を強めることによって、高度な融合性をもたらしたのである。スナイデルスは、ルーベンスとヤン・ブリューゲルとの間に築かれた親密な友好関係とは異なり、あくまでも画家としての共作であるにも関わらず、本作にこのような非常に高い融合性を示していることは、画家のルーベンスから受けた影響と豊かな画才による部分が大きい。なお本主題≪縛られたプロメテウス≫後、英雄ヘラクレスが大鷲を退治し、プロメテウスは救われたとされている。
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