2004/09/01掲載
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牛乳を注ぐ女(Milkmasje) 1658年45,5×41cm | 油彩・画布 | アムステルダム国立美術館
牛乳を注ぐ女の表情。画家の全ての作品の中でも特に人気が高く、現在も数多くの人々を魅了し続けている作品としても知られる本作は、所謂、使用人階級にあたる女性が牛乳を陶製の容器の中へ注ぎ込むという素朴な日常風景の一場面を描いた作品で、その表現は白眉の出来栄えである。
【牛乳を注ぐ女の表情】
陶製の容器の中へ注ぎ込まれる牛乳。左部の窓から室内に射し込んだ柔らかく明瞭な陽光描写の絶妙な加減や、画面を包み込む穏やかで静謐な雰囲気なども特筆すべき点であるほか、牛乳を注ぐ女やテーブル上の黄色、青色、赤色と、背後の白壁との鮮やかなコントラストは観者に爽快な印象を強く与えている。
【陶製の容器の中へ注ぎ込まれる牛乳】
フェルメール様式の大きな特徴のひとつであるポワンティエ技法(点綴法)によるパンの描写。画面全体にポワンティエ技法(点綴法)が認められ、その光の表現における秀逸な効果はテーブルの上に置かれるパンへ顕著に示されている(同部分の絵具層は三層に重ねられていることがX線調査によって判明した)。
【ポワンティエ技法によるパンの描写】
台形状のテーブル。フェルメールはテーブル上により多くの食物を配するために、テーブルを長方形ではなく台形状に描いている。なお本作にはかつては署名が記されていたことが判明しているも、現在では、その判別が極めて困難な状態にある。
【台形状のテーブル】 |