Description of a work (作品の解説)
2007/06/04掲載
Work figure (作品図)
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ヴァージナルの前に座る女性


(Zittende Klavichordspeelster) 1675年頃
51.5×45.6cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

現存するフェルメール最晩年の作品と位置付けられる『ヴァージナルの前に座る女性』。画題、構成要素、構図、画面サイズなどの共通点から数年前頃に描かれた、画家後期の傑作『ヴァージナルの前に立つ女性』の対画として制作されたと推測される本作に描かれるのは、画家がこれまでにも度々描いてきた音楽的風俗要素のひとつである≪ヴァージナル(ルネサンス・バロック期の音楽においてよく使用された撥弦鍵盤楽器チェンバロ(英名ハープシコード)の小型版)≫を弾く婦人である。『ヴァージナルの前に立つ女性』と比較すると、ヴァージナルを奏でる女性は対称に配されており、背後の画中画にはキューピッドが示す≪忠実の愛≫に対する≪俗欲の愛≫を意味する『取り持ち女(ディルク・ファン・バビューレン作)』が描かれているほか、画面手前にはヴィオラとそれに用いる弦が配されている。また表現手法においても、フェルメール後期の様式の大きな特徴である対象や構成要素の平面的簡略化と、空間構成や光の表現における視覚的な合理性への追求が本作には顕著に示されている。特にヴァージナルの前に座る女性の顔にかかる前髪や身にまとう硬質的に光を反射する青衣、女性が座る椅子の装飾や背後の画中画の額縁などは、画家の1660年代の表現様式からは想像もつかないほど描写の変化を示している。

関連:フェルメール作 『ヴァージナルの前に立つ女性』


【全体図】
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ヴァージナルの前に座る女。画題、構成要素、構図、画面サイズなどの共通点から数年前頃に描かれた、画家後期の傑作『ヴァージナルの前に立つ女性』の対画として制作されたと推測される本作に描かれるのは、≪ヴァージナル≫を弾く婦人である。



【ヴァージナルの前に座る女】
硬質的に光を反射する青衣の平面的な光の表現。フェルメール後期の様式の大きな特徴である対象や構成要素の平面的簡略化と、空間構成や光の表現における視覚的な合理性への追求が本作には顕著に示されている。



【青衣の平面的な光の表現】
画中画として描かれた、≪俗欲の愛≫を意味する『取り持ち女(ディルク・ファン・バビューレン作)』。『ヴァージナルの前に立つ女性』と比較すると、ヴァージナルを奏でる女性は対称に配されており、背後の画中画にはキューピッドが示す≪忠実の愛≫に対する≪俗欲の愛≫を意味する『取り持ち女』が描かれている。



【≪俗欲の愛≫を意味する『取り持ち女』】

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