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パリスの審判のある風景 1645-1646年
(Paysage avec le jugement de Pâris)
112×149cm | 油彩・画布 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー |
フランス古典主義の風景画家クロード・ロランの代表作『パリスの審判のある風景』。本作は、争いの女神エリスが最も美しい女神が手にするよう、神々の饗宴に投げ込んだ黄金の林檎をめぐり、我こそはと立ち上がった、ユピテルの正妻で最高位の女神ユノと、愛と美の女神ヴィーナス、知恵と戦争の女神ミネルヴァの中から最も美しい女神を、主神ユピテルにより神々の使者メルクリウスの介添でトロイア王国の王子である羊飼いパリスが選定し審判する、古来より最も人気の高かった神話のひとつ≪パリスの審判≫の場面が描かれる風景で、ロラン独特の詩情性に富んだ理想的風景描写や場面描写は秀逸の出来栄えである。また大気的な空気感や、閉鎖的な近景と対照的な遠景の広大な空間構成、柔和で温順な光彩表現、画面中央に配される巨木の存在感、そして女神らがまとう衣服の豊かで鮮やかな色彩なども本作の大きな見所であるほか、羊飼いパリスが連れる数頭の羊達に射し込む複雑な光と陰影の描写も注目に値する。なお本主題≪パリスの審判≫では、羊飼いパリスが人間界における最高の美女スパルタ王妃ヘレネをパリスに与えると約束した愛と美の女神ヴィーナスを選んだため、スパルタ王国とトロイア王国の間で戦争が起こったとされている。
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