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タルスに上陸するクレオパトラのいる風景 1643年
(Paysage avec débarquement de Cléopatre à Tarse)
119×170cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義時代の最も偉大な風景画家クロード・ロランの傑作『タルスに上陸するクレオパトラのいる風景』。本作は帝政期ローマのギリシア人思想家・著述家であるプルタルコスの有名な著作≪英雄伝≫に典拠を得た≪タルス(タルソスとも呼ばれる)に上陸するクレオパトラ≫の場面を描いた作品で、画家独特の風景画様式が顕著に示されている。画面下部やや右寄りに将校デリウスや六人の侍女を連れた女王クレオパトラが、さらにその右側には女王クレオパトラを迎える古代ローマの政治家・軍人マルクス・アントニウスが描かれている。この≪タルスに上陸するクレオパトラ≫は、紀元前41年に起こった、古代ローマの著名な政治家ユリウス・カエサルが暗殺された後、エジプトとローマの同盟関係に混乱が生じたため、正常化を図る目的で女王クレオパトラがアントニウスに接近したという場面であり、後に両者は結婚している。非常に詩情的で情感豊かに描かれる本作の、おぼろげでありながら明確な存在感を示す大気感や、高度な写実性による帆船や古代的建築物の描写、輝くような色彩による光の表現などに画家の溢れる画才が感じられる。なお本作同様ルーヴル美術館が所蔵する『サムエルに油を注がれるダヴィデ』と対画であることが知られている本作は、描かれた52年後の1695年、縦に2cm、横に22.5cm画面を拡大していることが確認されている。
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