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賢明の寓意 (Allégorie de la Prudence) 1645年頃
116.5×90.5cm | 油彩・麻布 | ファーブル美術館(モリエンペ) |
17世紀に活躍したフランス・バロック絵画の巨匠シモン・ヴーエを代表する寓意画のひとつ『賢明の寓意』。本作はルイ13世妃(王妃)アンヌ・ドートリッシュを≪賢明≫と≪摂政≫の寓意像とした寓意画で、ルイ13世の死の翌日(1643年5月15日)にオルレアン候フィリップが計画した宮殿改修・装飾事業の際、ルイ13世妃アンヌ・ドートリッシュの寝室の装飾画としてシモン・ヴーエに依頼し制作された作品である。伝統に倣い、アトリビュートとして蛇と鏡が描かれる画面中央の青と白の衣を身に着けた≪賢明≫の寓意像は、世界を意味する地球に寄り掛かり、三美神の中のひとりが持つ鏡を見ている。またその頭上では愛の神キューピッドによって≪勝利≫を意味する月桂樹の冠が授けられようとしている。一方で画面下部には時の翁(アトリビュートとして砂時計と大鎌が描かれる)が配され、恐れるように≪賢明≫の寓意像を見上げている。これらは戦乱や不徳の多かった不安定な当時の政治に対して、≪賢明≫、そして≪摂政≫の寓意像に見立てたルイ13世妃アンヌ・ドートリッシュによる善政への希望を意味しているとも解釈することができる。表現においてもヴーエ晩年の様式らしく、鮮明かつ流麗な色彩描写や運動的ながら洗練された人物表現、熟慮された構想・構図的配置などひとつの絵画作品としての見所や注目点も多い。
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