2004/02/24掲載
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手袋をした歌手(カフェの歌手)1878年頃(La chanteuse au gant (Chanteuse de Café)) 52.8×41.1cm | テンペラ・パステル・画布 | フォッグ美術館
歌手に当てられる人工的な光の効果的な描写。本作に描かれるのは、印象派の画家らを始め、写真家、文筆家、思想家など才能に溢れた様々な若い文化人が日々集い、互いに議論と交遊を重ねた、当時、最先端の流行発信場であったパリのカフェやレストランで歌う≪歌手≫と歌手の立つ舞台である。
【歌手に当てられる光の効果的な描写】
軽やかで動きを感じさせる舞台衣装の描写。黒色の手袋をした右手を上げ、力強く歌うこの歌手の見せる真剣で感情的な表情を、下からスポットを当てられた人工的な光を効果的に用い描写することによって、それを一層強調することに成功するだけでなく、なおかつ本作と対峙する者に強烈な印象を与える。
【軽やかで動きを感じさせる舞台衣装】
単純でありながら豊かで装飾的な背景。舞台衣装の軽やかで動きを感じさせる表現と、単純でありながら豊かで装飾的な色彩と、さらに歌手の半身にかかる深い黒色による背後の重厚な表現による、独特で洗練された統一感を感じさせる色彩と写真的な構図の構成感覚は見事の一言である。
【単純でありながら豊かで装飾的な背景】 |