Description of a work (作品の解説)
2009/04/12掲載
Work figure (作品図)
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アルルの病院の庭にて(アルルの老女たち)


(Dans le jardin de l'hôpital d'Arles) 1888年
73×92cm | 油彩・画布 | シカゴ美術研究所

総合主義の確立者のひとりポール・ゴーギャン、アルル滞在期の代表作『アルルの病院の庭にて(アルルの老女たち)』。フィンセント・ファン・ゴッホの誘いを受け1888年の10月から南仏アルルへ滞在していた頃に制作された本作は、アルルでの住まい兼アトリエであった「黄色い家」近くの公園を描いたとされる作品で、ゴッホも同公園を画題とした作品を幾つか手がけたことが知られている。画面手前中央から左側には巨大な茂みが配され、その反対側となる右側には赤々とした柵が描かれている。この茂みの陰影で目、鼻、髭が形成されており一部の研究者からはゴーギャン自身の重複像との指摘もされている。その背後には紺色の郷土的な衣服を身に着けた2人のやや年齢の高い婦人がほぼ同様の姿態で描かれており、特に顔が明確に描かれる左側の婦人は南仏アルル駅前にあったカフェ・ド・ラ・ガールの主人の妻マリー・ジヌー夫人であることが明白である。そしてこの2人の夫人と呼応するかのように右側へはミストラル(南仏特有の北風)避けとして藁で覆われた糸杉の若木が2本配されているほか、遠景にはもう一組の婦人らが配されている。本作で最も注目すべき点は総合主義の典型的表現手法であるクロワゾニスム(輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する表現描写)による様式的アプローチと、日本趣味からの影響を感じさせる非遠近的表現にある。茂み、柵、人物、糸杉、緩やかに曲がる小道、そして画面右上の池など構成要素のほぼ全てが明瞭な輪郭線と大胆な色彩を用いた色面によって平面的に描写されているが、さらに本作では遠近法を用いない複数の視点(本作の近景と遠景では視点が大きく異なる)を導入することによって装飾性が極端化されている。また画面右上の池には新印象主義的な点描表現の痕跡も確認することができ、本作の様式的近代性をより強調している点も特に注目すべきである。


【全体図】
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紺色の郷土的な衣服を身に着けるアルルの婦人。近景には2人のやや年齢の高い婦人がほぼ同様の姿態で描かれており、特に顔が明確に描かれる左側の婦人は南仏アルル駅前にあったカフェ・ド・ラ・ガールの主人の妻マリー・ジヌー夫人であることが明白である。



【紺色の郷土的な衣服を身に着ける婦人】
ミストラル避けの藁に覆われた糸杉の若木。本作で最も注目すべき点は総合主義の典型的表現手法であるクロワゾニスム(輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する表現描写)による様式的アプローチと、日本趣味からの影響を感じさせる非遠近的表現にある。



【北風避けの藁に覆われた糸杉の若木】
平面的かつ装飾的に表現された柵。前景の茂み、柵、人物、糸杉、遠景の緩やかに曲がる小道、そして画面右上の池など構成要素のほぼ全てが明瞭な輪郭線と大胆な色彩を用いた色面によって平面的に描写されている。



【平面的かつ装飾的に表現された柵】

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