2008/07/14掲載
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イア・オラナ・マリア(アヴェ・マリア、マリア礼賛)(Ia orana Maria) 1891年 114×89cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館
振り返りながら観る者と視線を交わす神の子イエス。1891年4月から1893年の6月まで都市パペエテを中心とした南国タヒチに滞在した時期(第一次タヒチ滞在期)に制作された本作は、タヒチを形成する小さな島のひとつにある村≪マタイエア≫の人々を描いた作品である。
【観る者と視線を交わす神の子イエス】
意味深げな表情を浮かべるタヒチ人の聖母マリア。本作の出来栄えは、画家自身も満足しており、友人ダニエル・ド・モンフレーに宛てた手紙の中でも「僕はこの作品の出来には大いに満足しているよ。」と記している。
【意味深げな表情を浮かべる聖母マリア】
現地の人々に聖母と神の子の降臨を伝える天使。画面中景の左側には黄色の翼の天使が、二人のタヒチの女(現地人)に対して聖母と神の子の存在(降臨)を指し示しており、画面中景の中央に描かれる二人のタヒチの女が胸の前で両手を合わせて聖母と神の子に信仰の証を示している。
【聖母と神の子の降臨を伝える天使】 濃紫色によって描かれた小道。画面左下に描かれるバナナの前には『IA ORANA MARI』と記されており、『IA ORANA』は現地では挨拶の時に用いる言葉で、画家の自伝的著書『ノア・ノア』にも登場させるなど、当時の画家が大変興味を示した言葉のひとつである。
【濃紫色によって描かれた小道】 |