Description of a work (作品の解説)
2008/12/16掲載
Work figure (作品図)
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ポール・ガシェ医師の肖像(ガッシェ博士の肖像)


(Dr. Paul Gachet) 1890年
67×56cm | 油彩・画布 | 個人所蔵(米国)

後期印象派の孤高なる画家フィンセント・ファン・ゴッホが最晩年に手がけた肖像画の代表作『ポール・ガシェ医師の肖像(ガッシェ博士の肖像)』。本作は、ゴッホがサン・レミのカトリック精神療養院での生活で、さらに精神的不安定状態へと陥ってしまったゴッホが、1890年5月20日からパリ北西イル=ド=フランス地域圏のオーヴェール=シュル=オワーズに赴き、新たな治療を受けていた画家の友人であった医学博士(精神科医)ポール・ガシェを描いた単身肖像画である。パリのオルセー美術館にほぼ同時期に制作された同構図のポール・ガシェ医師の肖像が所蔵されているが、本作と比較するとその表現には狂気染みた画家の強迫観念的な精神的危機を見出すことができる。画面中央に描かれるポール・ガシェ医師は視点が合わず虚空を見つめるような姿で描かれており、その姿態は伝統的な古典絵画でのメランコリック(憂鬱)を示すような片肘を突き握られた拳を蟀谷あたりに当てている。また本作の太く短い筆触の流れによって表現される独特の質感表現や明確な輪郭線は極限の精神状態にありながらも表現における独自性を見失うことが無かったゴッホの画家としての意識の強さや依存度の高さを感じることができる。ゴッホ自身は本作に対して「僕は写真のようにただ似せるのではなく、情熱に満ちた表現で肖像画を描きたい。この作品では現代の社会そのものの悲痛な表情を伝えたいのだ」と妹に宛てた手紙の中で述べている。なお当時の大昭和製紙(2003年に日本製紙と合併)の名誉会長であった斉藤了英氏が1990年5月に開催されたオークションで、ルノワールの傑作『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場』と共に、115億円という破格の値段で購入したものの、97年に夏に海外へ売却されており、現在の取引価格は1億3610万ドル(約132億円)と推測されている。

関連:オルセー美術館所蔵『ポール・ガシェ医師の肖像』


【全体図】
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虚ろな表情の医学博士ポール・ガシェの姿。本作はゴッホが1890年5月20日からパリ北西オーヴェール=シュル=オワーズに赴き、新たな治療を受けていた画家の友人であった医学博士(精神科医)ポール・ガシェを描いた単身肖像画である。



【虚ろな表情の医学博士ポール・ガシェ】
テーブルの上に置かれる色鮮やかな花。パリのオルセー美術館にほぼ同時期に制作された同構図のポール・ガシェ医師の肖像が所蔵されているが、本作と比較するとその表現には狂気染みた画家の強迫観念的な精神的危機を見出すことができる。



【机の上に置かれる色鮮やかな花】
太く短い筆触の流れによって表現される独特の質感表現。画面中央に描かれるポール・ガシェ医師は視点が合わず虚空を見つめるような姿で描かれており、その姿態は伝統的な古典絵画でのメランコリック(憂鬱)を示すような片肘を突き握られた拳を蟀谷あたりに当てている。



【太く短い筆触の流れによる独特の表現】

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