Description of a work (作品の解説)
2008/04/06掲載
Work figure (作品図)
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ひまわり、5本

 Tournesols (cinq) 1888年
98×69cm | 油彩・画布 | 山本顧弥太氏旧蔵(現在は焼失)

後期印象派の偉大なる画家フィンセント・ファン・ゴッホの、現在は失われてしまった代表作『ひまわり、5本』。かつて神戸の芦屋で貿易商を営んでいた実業家山本顧弥太氏が所蔵していたものの、第二次大戦の戦火で焼失してしまうという悲劇に見舞われた本作は、フィンセント・ファン・ゴッホが強烈な陽光に憧れ、強い希望を抱いて訪れた南仏アルルで制作された6点のひまわりを画題とした作品の中の一点である。アルル時代の『ひまわり』では、ロンドン・ナショナル・ギャラリーなどが所蔵する『ひまわり、14本』のような、ゴッホが誘った画家達と共同生活をするために南仏の町アルルで借りた、通称「黄色い家」を暗示する黄色の背景のものが最も知られているが、本作では描かれる向日葵の黄色や橙色と補色関係にある深い藍色が背景色に用いられており、向日葵の数から考察しても、現在米国の個人が所有する『ひまわり、3本』と共に本作はやや特異な存在であり、『ひまわり、14本』の構成に至る過程段階の作とも、明確な色彩対比による視覚的効果を目指したとも推測されている。しかし本作が他の作品らと決定的に異なっている点は、花瓶の足元二輪の向日葵の頭が配されている点である。本画題≪ひまわり(向日葵、ヒマワリ)≫は、南仏アルルに向かう前に滞在したパリでも5点制作されるなど画家にとって最も魅力的な画題のひとつであったが、アルル時代のひまわりには画家の抱いていた南仏アルルでの制作活動や生活に対する希望など(ある種の自画像的な)心理的内面がより明確に表れており、その意味では本作のやや陰鬱にすら感じられる(パリ時代に制作された向日葵に近い)色彩表現は特に注目に値する。また向日葵や花瓶の形体描写においてもアルル時代の『ひまわり』の中では最も単純化、そして平面化されており、クロワゾニスム(対象の質感、立体感、固有色などを否定し、輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する描写)を思わせる太く力強い輪郭線と共に、本作の解釈・考察する上で重要視されている。

関連:ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵 『ひまわり、14本』
関連:個人所蔵 『ひまわり、3本』
関連:ノイエ・ピナコテーク所蔵 『ひまわり、12本』
関連:フィラデルフィア美術館所蔵 『ひまわり、12本』
関連:ファン・ゴッホ美術館所蔵 『ひまわり、14本』
関連:損保ジャパン東郷青児美術館所蔵 『ひまわり、15本』


【全体図】
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向日葵の強烈な橙色の色彩と絵の具の質感を感じさせる筆触。かつて神戸の芦屋で貿易商を営んでいた実業家山本顧弥太氏が所蔵していたものの、第二次大戦の戦火で焼失してしまうという悲劇に見舞われた本作は、フィンセント・ファン・ゴッホが強烈な陽光に憧れ、強い希望を抱いて訪れた南仏アルルで制作された6点のひまわりを画題とした作品の中の一点である。



【向日葵の強烈な橙色の色彩】
単純化された明確な輪郭線による形体表現。向日葵や花瓶の形体描写においてもアルル時代の『ひまわり』の中では最も単純化、そして平面化されており、クロワゾニスムを思わせる太く力強い輪郭線と共に、本作の解釈・考察する上で重要視される。



【単純化された輪郭線による形体表現】
向日葵の黄色や橙色と補色関係にある深い藍色の背景色。アルル時代のひまわりには画家の抱いていた南仏アルルでの制作活動や生活に対する希望など(ある種の自画像的な)心理的内面がより明確に表れており、その意味では本作のやや陰鬱にすら感じられる(パリ時代に制作された向日葵に近い)色彩表現は特に注目に値する。



【花と補色関係にある深い藍色の背景色】

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