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田舎のダンス
(La dance à la campagne) 1883年
180×90cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)
印象派の中でも特に名が知られた大画家ルノワールが、光の効果を重んじ形状の正確性を失った純粋な印象主義に疑問を抱き始め、古典主義へと傾倒していった1880年代に制作された代表作≪ダンス三部作≫の一枚『田舎のダンス』。『
都会のダンス』同様に画商デュラン=リュエルの家の装飾用に制作された本作は、画家の友人であったポール・ロートと、しばしば画家のモデルとなり、後に妻ともなるアリーヌ・シャリゴ(当時24歳)をモデルに描かれた作品で、単純かつ洗練された構成、画面の中で溶け合うかのような人物と背景の一体感、明確な人物の形態、やや装飾的な表現など、光の効果的な表現や曖昧な輪郭、複雑な空間構成等が特徴であった印象主義時代とは明らかに異なる表現手法によって描かれているのが大きな特徴である。本作での喧騒的で活気に満ちた雰囲気や、如何にも楽しげな表情、アリーヌ・シャリゴが身に纏う垢抜けない衣服などは、『都会のダンス』とは対照的に、気楽で田舎的ながら、どこか心を許してしまえるような安心感や幸福感を観る者に与える。ルノワールはこの頃、アリーヌ・シャリゴと、『
都会のダンス』のモデルを務めたシュザンヌ・ヴァラドンの二人に心惹かれていたとされ、画家がそれぞれに感じていた人物像や抱いていた想いが表現されていると考えられている。なお画家は田舎のダンス・都会のダンスの両作品を描く前に、≪ダンス三部作≫の第一作目となる『
ブージヴァルのダンス(ボストン美術館所蔵)』を制作している。
関連:
ルノワール作 『都会のダンス』
関連:
ルノワール作 『ブージヴァルのダンス』