2007/11/26掲載
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イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像(Irène Cahen D'Anvers) 1880年 65×54cm | 油彩・画布 | ビュレル・コレクション(チューリヒ)
清潔で上品なイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の顔立ち。本作は(当時としては数少ない)ルノワールの理解者であり庇護者でもあった裕福な銀行家ルイ・カーン・ダンヴェールの三人の女の子供の内、末娘である≪イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢≫の肖像として1880年から翌年にかけて制作された作品である。
【清潔で上品な少女の顔立ち】
綿密に細部まで画家特有の筆触によって描写される少女の赤毛の頭髪。本作の中でも注目すべき点は少女の長く伸びた赤毛の頭髪にある。印象主義的技法(筆触分割)に捉われない画家の個性を感じさせる流形的な筆触によって髪の毛一本一本が輝きを帯びているかのように繊細に表現されている。
【繊細に描写される赤毛の頭髪】
膝の上で軽く組まれた少女の小さな手。その他にも、清潔で上品な顔立ちの中で輝く大きく印象的な瞳、子供特有の白く透き通る肌、肩にかかり腰まで垂れた少し波打ち気味の長い赤毛の頭髪、質の良さを感じさせる青白の衣服など、細心の注意が払われながら表現されている。
【膝の上で軽く組まれた小さな手】
少女の髪の毛と溶け合うかのような背景の色彩。このように大人が子供に大して抱く愛情と、画家の子供の肖像画に通じる微かな甘美性を同時に感じさせる本作は今なお、画家の代表作として人々を強く惹きつけているのである。
【少女の頭髪と溶け合うかのような背景】 |