Description of a work (作品の解説)
2008/05/27掲載
Work figure (作品図)
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パリスの審判

 (Le Jugement de Pâris) 1913-14年頃
73.0×92.5cm | 油彩・画布 | ひろしま美術館(広島)

印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール晩年期の様式が明確に示される代表的な神話画作品のひとつ『パリスの審判』。本作に描かれる主題は、神々の饗宴時に最も美しい女神が手にするようにと争いの女神エリスが投げ込んだ黄金の林檎を巡り、我こそはと立ち上がった、ユピテルの正妻で最高位の女神ユノと、愛と美の女神ヴィーナス、知恵と戦争の女神ミネルヴァの中から最も美しい女神を、主神ユピテルにより神々の使者メルクリウスの介添でトロイア王国の王子である羊飼いパリスが選定し審判するという、神話の中で最も知られた主題のひとつ≪パリスの審判≫である。ルノワールは本作を制作する以前の1908年にも同主題の作品(パリスの審判 第1ヴァージョン)を手がけており、第1ヴァージョン共に本作は、プラド美術館(マドリッド)に所蔵されるバロック美術の大画家ピーテル・パウル・ルーベンスの『パリスの審判』からの構図的引用や表現的影響を感じさせる。本作では画面左下の羊飼いパリスが、画面ほぼ中央に配される愛と美の女神ヴィーナスへ黄金の林檎を渡す瞬間の場面が描かれており、女神ヴィーナスの左右では最高位の女神ユノと知恵と戦争の女神ミネルヴァが、やや不満げな表情を浮かべながら驚きの仕草を見せている。さらに羊飼いパリスの上部には第1ヴァージョンでは描かれなかった神々の使者メルクリウスが選定の結果を伝えるかのように黄金の林檎と天上を指差している。震えるかのような筆触で描写される肉感に溢れたふくよかな女神達の裸婦表現や、光と温もりに満ちた空想的な色彩表現は、リュウマチ性関節炎や顔面神経痛を患いながらも画家が晩年期に辿り着いた独自の様式の典型であり、その輝きは今なお色褪せず、観る者に新鮮な驚きと感動を与える。

関連:ルーベンス作 『パリスの審判(プラド美術館所蔵版)』
関連:1908年制作 『パリスの審判(第1ヴァージョン)』


【全体図】
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愛の女神ヴィーナスに黄金の林檎を渡す羊飼いパリス。本作に描かれる主題は、神話の中で最も知られた主題のひとつ≪パリスの審判≫で、ルノワールは本作を制作する以前の1908年にも同主題の作品(パリスの審判 第1ヴァージョン)を手がけている。



【黄金の林檎を渡す羊飼いパリス】
羊飼いパリスによって最も美しい女神に選ばれた女神ヴィーナス。バロック美術の大画家ピーテル・パウル・ルーベンスの『パリスの審判』からの構図的引用や表現的影響を感じさせる本作では、画面左下の羊飼いパリスが、画面ほぼ中央に配される愛と美の女神ヴィーナスへ黄金の林檎を渡す瞬間の場面が描かれている。



【最も美しい女神に選ばれたヴィーナス】
震えるかのような筆触で描写される肉感に溢れたふくよかな裸婦表現。この独特の人物表現や、光と温もりに満ちた空想的な色彩表現は、リュウマチ性関節炎や顔面神経痛を患いながらも画家が晩年期に辿り着いた独自の様式の典型である。



【肉感に溢れた裸婦表現】
第1ヴァージョンでは描かれなかったメルクリウス。本作の主題≪パリスの審判≫とは、黄金の林檎を巡り、女神ユノ、女神ヴィーナス、女神ミネルヴァの中から最も美しい女神を、トロイア王国の王子である羊飼いパリスが選定するという、神話の中で最も知られた主題のひとつである。



【神々の使者メルクリウスの姿】

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