Description of a work (作品の解説)
2008/11/24掲載
Work figure (作品図)
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岩に座る浴女

 (Baigneuse assise sur un rocher) 1892年
80×63cm | 油彩・画布 | 個人所蔵(フランス)

印象派を代表する巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールが手がけた非常に美しい裸婦作品のひとつ『岩に座る浴女』。枯渇時代(酸っぱい時代)と呼ばれる1880年代後半期からの探求の時期を経て、ルノワールが独特の裸婦表現へと辿り着く直前頃となる1890年代前半に制作された本作は、画家が生涯の中で幾度も手がけ続けてきた≪裸婦≫を画題とした作品の中の1点である。画面中央に描かれる、まるで幼い少女のような顔立ちの若い娘は、何かを見ようとしているのかやや下へと視線を向けている。その横顔は非常に端整でありながら、長い睫毛や赤味がかった頬、少し開き気味の厚い唇などには豊かな官能性を感じさせる。また左手では自身の腰辺りまで長く垂れた緩く波打つ柔らかい金髪の束を掴むように握られており、その自然的な仕草はこの人物の無意識的な癖を思わせる。姿態全体としてはルノワールの裸婦描写の大きな特徴である丸みを強調した柔らかで膨よかな表現がよく示されており、特に奥側(右手側)の乳房から腰にかけて流れる緩やかな曲線的ラインや外側(左手側)の腰から臀部、そして大腿部へと続く女性特有のS字的な曲線描写にはルノワールが取り組み続けた裸婦の理想的な美の形を見出すことができる。さらに本作の裸婦表現において最も注目すべき点は、透き通るような裸婦の輝きを帯びる白い肌の色彩的取り組みにある。今も観る者を魅了し続けるこの見事なまでの肌の色彩の美しさは、枯渇時代の古典的で対象の体温を感じさせない独特な色彩表現から自由奔放で豊潤な色彩表現へと移行する、その過渡期であったからこそ描き出すことができた描写表現であり、それはルノワールのどの時代にもない瞬間的な美しさに溢れている。なお明瞭で多色的な色彩で描かれる本作の背景の断崖は画家がこの頃滞在していた大西洋岸ポルニの風景であると推測されている。


【全体図】
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俯きやや下へと視線を向ける若い娘。長い睫毛や赤味がかった頬、少し開き気味の厚い唇などには豊かな官能性を感じさせるほか、左手では自身の腰辺りまで長く垂れた緩く波打つ柔らかい金髪の束を掴むように握られており、その自然的な仕草は対象の無意識的な癖を思わせる。



【やや下へと視線を向ける若い娘】
透き通るような裸婦の輝きを帯びる白い肌。この見事な肌の表現は枯渇時代の古典的で対象の体温を感じさせない独特な色彩表現から自由奔放で豊潤な色彩表現へと移行する、その過渡期であったからこそ描き出すことができた描写表現であり、それは画家のどの時代にもない瞬間的な美しさに溢れている。



【裸婦の透き通るような白い肌】
明瞭で多色的な色彩で描かれる風景。本作に描かれる裸婦の姿態全体としてはルノワールの裸婦描写の大きな特徴である丸みを強調した柔らかで膨よかな表現がよく示されており、画家が取り組み続けた裸婦の理想的な美の形を見出すことができる。



【明瞭で多色的な色彩】

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