Description of a work (作品の解説)
2011/01/03掲載
Work figure (作品図)
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仙人掌群鶏図

 (Cactus and Domestic Fowls) 1789年
各177.2×92.2cm | 襖絵六面・紙本金地著色 | 西福寺

家督を譲った後、おおよそ45年にも及ぶ伊藤若冲の画業における晩年期の傑作『仙人掌群鶏図(さぼてんぐんけいず)』。天明の大火に遭った後、一時的に滞在した大阪の鰻谷で薬種問屋を営む数寄者、吉野五運の依頼によって同家の菩提寺(西福寺)の襖絵として制作されたと伝えられる本作は、若冲が絵画を学び始めた頃から描き続けてきた、(絵師の)身近にあり、直接観察でき、美しく面白い形状や色彩を有する画題対象≪鶏≫と、異国から入った珍しい植物≪仙人掌≫を合わせた、一見すると奇妙、奇天烈な作品である。基本的に職業画家として絵画を制作することが無かった裕福な若冲が、天明の大火で家屋と資産を失った後、生活のために描かれた作品でもある本作では襖六面の左右最端に奇形的な仙人掌が、そして六面全てに鶏が描かれているが、左から2番目の面と最右面以外は雌雄の鶏が描き込まれている。絵師の代表作『動植綵絵』でも数多く描かれる鶏(※例:南天雄鶏図)であるが、その印象には絵師自身の内面性と境遇による差異を見出すことができる。南天雄鶏図に示されるよう、動植綵絵を制作していた頃の若冲は絵画としての自身の表現美、様式美、思想を重んじ、現実に肉薄する厳しい写実描写や恣意的な形態模写など人を寄付けないほどの幻想性と独創性を感じさせる画風が特徴であったが、本作では高度な写実性や緊張感漂う構図・構成こそ変わらないものの、作為的な鶏の描写の中に微笑ましい親和感を見出すことができる。特に(六面中左から)雌鶏や雛を無視し直立する雄鶏、話しかけるものの雌鶏にそっぽを向かれる雄鶏、雌鶏の愚痴を聞くかのような雄鶏、喧嘩するかのような雌雄の鶏と、対で描かれる鶏の家庭的で世俗的な描写には、若冲の世間感、加えて一面中単独で描かれる鶏に世間の中の若冲の姿を感じることができる。

関連:宮内庁三の丸尚蔵館 『動植綵絵 南天雄鶏図』


【全体図】
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まるで喧嘩しているかのような雌雄の鶏。基本的に職業画家として絵画を制作することが無かった裕福な若冲が、天明の大火で家屋と資産を失った後、生活のために描かれた作品でもある本作では襖六面の左右最端に奇形的な仙人掌が、そして六面全てに鶏が描かれているが、左から2番目の面と最右面以外は雌雄の鶏が描き込まれている。



【喧嘩しているかのような雌雄の鶏】
雛を背に乗せる雌鶏の母性的な姿。動植綵絵を制作していた頃の若冲は現実に肉薄する厳しい写実描写や恣意的な形態模写など人を寄付けないほどの幻想性と独創性を感じさせる画風が特徴であったが、本作では高度な写実性や緊張感漂う構図・構成こそ変わらないものの、作為的な鶏の描写の中に微笑ましい親和感を見出すことができる。



【雛を背に乗せる雌鶏の母性的な姿】
奇妙な仙人掌の描写。大阪の鰻谷で薬種問屋を営む数寄者、吉野五運の依頼によって同家の菩提寺(西福寺)の襖絵として制作されたと伝えられる本作は、若冲が絵画を学び始めた頃から描き続けてきた、(絵師の)身近にあり、直接観察でき、美しく面白い形状や色彩を有する画題対象≪鶏≫と、異国から入った珍しい植物≪仙人掌≫を合わせた作品である。



【奇妙な仙人掌の描写】

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