2007/08/21掲載
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読書(Reading) 1890-1891年90×80cm | 油彩・画布 | 東京国立博物館 関連:黒田清輝作 『婦人図(厨房)』
部屋で読書に耽るマリア・ビョーの真剣な表情。本作はパリの南東60キロほどに位置する小村グレー・シュル・ロワンで豚肉屋を営んでいた家の娘で、マリア・ビョー(当時20歳頃)をモデルに、部屋の一室で読書に耽る女性を描いた作品で、フランス画壇における黒田のデビュー作となった作品でもある。
【部屋で読書に耽るマリア・ビョー】
形態や状態まで綿密に描写された書籍。鎧戸から射し込む柔らかな光に全身を優しく包み込まれる、色白の肌が特徴的なマリア・ビョーは、室内の片隅で書籍を読み耽っており、指でページを捲ろうとしている。
【形態や状態まで綿密に描写された書籍】
衣服に当たる光の微妙な変化。書籍の頁や、マリアの身に着けている赤いシャツ、紺色のスカートは布地や襞の形態や状態まで綿密に描写されているが、そこに映える光線の表現に変化する光と大気の微妙な変化の様子の描き分けが認められる。
【衣服に当たる光の微妙な変化】
鎧戸から射し込む柔らかな光。本作のモデルであるマリア・ビョーは本作の他にも『婦人図(厨房)』など黒田のグレー時代の作品に度々登場しているほか、1891年2月には本図に補筆や額縁の手当が施され、翌年には明治美術会春季展覧会に参考出品されている。
【鎧戸から射し込む柔らかな光】 |