Description of a work (作品の解説)
2008/01/01掲載
Work figure (作品図)
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松林図屏風

 (Pine Woods) 16世紀(桃山時代)頃
各156.0×347.0cm | 6曲1双・紙本墨画 | 東京国立博物館

桃山時代を代表する絵師・長谷川等伯の至高の傑作、国宝『松林図屏風』。日本絵画史上においても類稀な完成度と様相と呈している本作は、初冬の朝靄か雲霧(又は驟雨)がかかる松林の風景を描いた作品である。多くの研究者や批評家も述べているように、本作の湿潤で大気的な雰囲気や松林の情景は、四季(における儚げな移ろい)の情緒や時間的無限性を如実に感じさせる。また、おそらく画面を立て藁筆を用いて描写したのであろう、素早い筆致による荒々しく勢いのある松枝の表現や、水墨による黒の濃淡のみで表現される簡潔で明瞭な松林の様子、不必要な要素を一切排し、松の木々と遠景の山のみが絶妙に配される計算された画面構図・構想も、画家の現存する全作品の中でも白眉の出来栄えである。さらに永遠に続いていくかのような空間的奥行きと広がりを感じさせる余白の取り方は、画家の瞬間の感興を写し描いたかのようであり、この軽妙で潔いな物質・空間的表現こそ土佐派や狩野派にも無い、画家独自の絵画様式・絵画世界なのである。画家自身が強い信仰(長谷川一家は日蓮宗徒であった)を持っていた(宗教的)禅世界をも超越したスケールの大きさは、何物にも変え難い奥深さとに静謐な詩情性と精神性満ち溢れており、まさに孤高の極みに通じる日本の美そのものである。なお本作の制作意図やその経緯の詳細は現在も不明であるものの、一部の研究者らからは下絵として描かれた本作を屏風として仕立てたものだとする説も唱えられているほか、本作に捺される落款は、完成後、何れかの時代に別の人物によって捺されたとされている。

関連:『松林図屏風』全体図左隻拡大図右隻拡大図


【全体図】
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素早い筆致による荒々しく勢いのある松枝の表現。日本絵画史上においても類稀な完成度と様相と呈している本作は、初冬の朝靄か雲霧(又は驟雨)がかかる松林の風景を描いた作品で、本作の湿潤で大気的な雰囲気や松林の情景は、四季(における儚げな移ろい)の情緒や時間的無限性を如実に感じさせる。



【荒々しく勢いのある松枝の表現】
湿潤で大気的な松林の情景。素早い筆致による荒々しく勢いのある松枝の表現や、水墨による黒の濃淡のみで表現される簡潔で明瞭な松林の様子、不必要な要素を一切排し、松の木々と遠景の山のみが絶妙に配される計算された画面構図・構想も、画家の現存する全作品の中でも白眉の出来栄えである。



【湿潤で大気的な松林の情景】
無限の広がりを感じさせる余白と捺される落款。永遠に続いていくかのような空間的奥行きと広がりを感じさせる余白の取り方は、画家の瞬間の感興を写し描いたかのようであり、この軽妙で潔いな物質・空間的表現こそ土佐派や狩野派にも無い、画家独自の絵画様式・絵画世界である。



【無限の広がりを感じさせる余白】

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