Description of a work (作品の解説)
2010/01/04掲載
Work figure (作品図)
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龍虎図屏風

 (Dragon and Tiger) 1606年(慶長11年)
各153.1×335cm | 6曲1双・紙本墨画 | ボストン美術館

16〜17世紀にかけて活躍した安土桃山時代を代表する巨匠、長谷川等伯の最晩年の傑作『龍虎図屏風』。制作の意図など詳細は不明であるものの、画面内「自雪舟五代長谷川法眼等伯筆 六十八歳」の款記から、絵師最晩年(1606年)の制作であることが明確に判明している本作は、当時の武家社会で最も好まれた、非常に伝統的な画題のひとつである≪龍虎≫を描いた六曲一双の屏風絵作品である。右隻へは眼を見開き鋭い前足の三爪を立てながら一匹の龍が暴風を伴いながら黒雲の中から現れる姿が描かれており、その様子は伝説上の生物らしく恐々しくも神秘的な力強さに満ち溢れている。一方、左隻へ配される雄虎は暴風に臆することなく、悠然と立ち振る舞いながら右隻へ現れる龍へと睨みつけるように視線を向けている。本作で最も注目すべき点は描かれる対象生物(龍虎)の内面的本質を捉えた描写にある。本作に描かれる龍虎の姿はいずれも動物としての本能的獰猛性を強調するかのように描写されており、また構図や主題そのものに関しても極めて伝統的な表現手法に則っている。さらに描写手法に注目しても、これまでの抒情性を感じさせる大気的・空気的な表現や構成を重視する表現から、本作では対象の本質を捉えるかのような鋭利で荒々しく、形態・形象に重きを置いた表現へと変化していることが明確に示されている。これらは全て中国の画僧牧谿に傾倒していた50代の等伯とは明確に異なる晩年期(60代〜70代)の等伯に共通する表現であり、牧谿を経験した後、独自の美の高みへと昇華させた等伯の個としての絵画的な到達点を感じることができる。

関連:『龍虎図屏風』全体図左隻拡大図右隻拡大図


【全体図】
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黒雲の中から現れる龍の姿。画面内「自雪舟五代長谷川法眼等伯筆 六十八歳」の款記から、絵師最晩年(1606年)の制作であることが明確に判明している本作は、当時の武家社会で最も好まれた、非常に伝統的な画題のひとつである≪龍虎≫を描いた六曲一双の屏風絵作品である。



【黒雲の中から現れる龍の姿】
立てられる龍の三爪。右隻へは眼を見開き鋭い前足の三爪を立てながら一匹の龍が暴風を伴いながら黒雲の中から現れる姿が描かれており、その様子は伝説上の生物らしく恐々しくも神秘的な力強さに満ち溢れている。



【立てられる龍の三爪】
暴風に臆することなく、悠然と立ち振る舞いながら龍へ視線を向ける雄虎。本作に描かれる龍虎の姿は動物としての本能的獰猛性を強調するかのように描写されており、また構図や主題そのものに関しても極めて伝統的な表現手法に則っている。



【龍へ視線を向ける雄虎】
鋭利で荒々しい晩年期特有の描写手法。描写手法に注目しても、これまでの抒情性を感じさせる大気的・空気的な表現や構成を重視する表現から、本作では対象の本質を捉えるかのような鋭利で荒々しく、形態・形象に重きを置いた表現へと変化していることが明確に示されている。



【晩年期特有の描写手法】

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