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十字架降下(ピエタ)(Deposizione (Pieta)) 1542-45年頃
268×173cm | 油彩・板 | ブザンソン美術館 |
マニエリスムの大きな特徴である縦長に引き伸ばされた人体や画家独特の冷艶で甘美性を併せ持つ感情表現が、よく表れているブロンズィーノの代表的な宗教画のひとつ『十字架降下(ピエタ)』。コジモ1世の妻エレオノーラ・ディ・トレドの個人礼拝堂(パラッツォ・ヴェッキオ内)の祭壇画として依頼され、制作した本作の主題は磔刑に処されたイエスの亡骸を十字架より降ろす場面を描いた≪十字架降下≫であるが、聖母マリアが息子であるイエスの亡骸を抱く≪ピエタ≫としても解釈される。画面上部には十字架や石柱などの受難具を手にする天使たちを配し、また画面下部には磔刑に処されたイエスと、亡骸を抱く聖母マリアを中心に、マグダラのマリアや福音書記者ヨハネなど磔刑に立ち会ったとされる諸聖人が描かれてる。画面中央にはイエスの亡骸を抱く、悲壮に満ちた聖母マリアが描かれ、このドラマティックなをイエスと聖母マリアの場面は、ブロンズィーノ独特な冷艶で甘美性を併せ持つ表現で描かれおり、神性を汚すことなく豊かな感情を見る者に呼び起こさせている。また本作はエレオノーラ・ディ・トレド礼拝堂に収められた後、グランヴェル枢機卿に贈られ、彼の死後、墓所であったブザンソンに置かれた経緯を経てブザンソン美術館の所蔵となっており、現在エレオノーラ・ディ・トレド礼拝堂にはレプリカが配されている。
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