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受胎告知 (Anunciacion) 1597-1600年
315×174cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
マニエリスム最後にして最大の巨匠エル・グレコ後期を代表する傑作『受胎告知』。マドリッドのドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の大祭壇衝立下段中央部として制作された本作に描かれるのは、大天使ガブリエルから父なる神の意志により神の子イエスを宿す聖なる器として聖胎を告げら、それを静粛に受ける聖母マリアを描いた≪受胎告知≫の場面で、現実感を超越した極めて象徴的な表現が示されている。画面中央よりやや上に描かれる父なる神の三位のひとつである聖霊が放つ非常に神秘的な光によって超自然的に表現される全体の雰囲気は、エル・グレコの古典的表現からの逸脱を示し、画家独特のうねるような筆跡によって他に類をみない独特の世界観を構築することに成功している。このような神秘性を携える表現手法はエル・グレコ後期の大きな特徴のひとつであり、本作はそれが最も明確に示される作品としても知られている。また本作はドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の後はバラゲール美術館が所蔵していたものの、プラド美術館へと寄贈された来歴を持っている。
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