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聖母被昇天(Asuncion) 1577-1579年
401×229cm | Oil on canvas | シカゴ美術研究所 |
エル・グレコ作『聖母被昇天』。現在、シカゴ美術研究所の下で調査・研究がおこなわれている本作の主題は、聖母の死後、一度は魂が天に召された後、地上に復活を遂げた聖母マリアの肉体と魂が再び天上へと還る場面を描く≪聖母被昇天≫で、エル・グレコ作品の代表的な主題でもある。聖母マリアの姿は伝統的な朱色と紺色の衣服であるが、エル・グレコ独特の輝くような青色が、画面上方の天上の光に包まれた背景や天使たちとと重なり、より一層の存在感を示している。画面下部では聖ヨハネや聖ペテロなどイエスの弟子(使徒)達が、聖母の棺を囲む中、昇天してゆく聖母を目撃する場面が描かれた。またスペインは聖母信仰が盛んである為、エル・グレコを始めとするスペインで活躍した多くの画家は、聖母を主題とした作品を残している。誇大表現とも捉えられかねない劇的な人体表現を駆使し、手がけられたこの≪聖母被昇天≫は、エル・グレコの最も得意とする主題のひとつでもあるほか、聖母マリアが上弦の月に乗っていることにも注目したい。本作は≪聖三位一体≫と同様、トレドのサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ聖堂のために制作された作品で、この連作はスペインへ渡ったエル・グレコにとって、最も大きな仕事であったと研究されている。
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