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キリストの磔刑と2人の寄進者 1585-1590年
(Cristo crucificado con dos donantes)
250×180cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
ルーヴル美術館が所蔵するエル・グレコの代表的な磔刑作品『キリストの磔刑と2人の寄進者』。本作の主題はゴルゴダの丘で磔刑に処されるイエスを描いた≪磔刑≫であるが、本作でエル・グレコは人間の存在の二重性を示しており、一方では聖職者と寄進者を描き、物理的な世界を具体化しているが、画面の中心では神性と聖性を具体化した十字架に掲げられるイエスを描いている。これは本作が祭壇上へ配されたときに、聖職者と寄進者の二人は、神性と聖性の象徴であるイエスと一体となり、同一視される存在であることを作意としている。引き伸ばされる人体構造に、暗い色調の中でより輝きを増す光の表現、陰鬱な世界観で深い表情を浮かべる神の子イエスの存在感は、まさにエル・グレコ作品の本質を示すものである。新約聖書によると、十字架に掲げられたイエスの頭上には「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と磔刑の罪状が付けされた。宗教画において、これはしばしば、組み合わせ文字≪I.N.R.I≫を用いて表現される。
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