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オリーブ山のキリスト (Oracion en el huerto) 1590-98年
102×114cm | Oil on canvas | トリード美術館(米) |
エル・グレコの異質的な作風がよく表れている、画家の代表的な宗教画のひとつ『オリーブ山のキリスト』。本作の主題はユダの裏切りによりローマ軍に捉えられることを予知したイエスが、最後の晩餐後、弟子のペトロ、大ヤコブ、ヨハネの三人を連れゲツセマネのオリーブ山(橄欖山)に赴き父なる神へ父なる神へ災いを退けるよう(主に杯や天使の姿で表現される)祈りを捧げる≪オリーブ山の祈り(ゲツセマネの園とも呼ばれる)≫であり、これは混沌とした夜景の場面を月明かりに照らされる青い色調で描き、かつ印象派絵画にも通ずる、うねりにも似た不安定な構成によるイエスの内面の恐怖感や、この後、イエスに訪れるユダの裏切りと受難への苦悩を表現している。また青い色調で描かれる混沌とした夜景の中、雲の間から射し込む月明かりによって神秘的に照らされる登場人物や、その人物たちの内面まで深く抉り込む感情の表現は圧巻である。なおイエスがオリーブ山へ連れて行った弟子はペトロ、小ヤコブ(ゼベダイの子)、ヨハネの三人で、それぞれキリスト十二弟子の中でも特に重要視される存在。また弟子たちとは対照的に、画面右側にはイエスを捉えに来たユダとローマ兵の姿が描かれている。
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