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イエスの御名の礼拝 1577-1579年頃
(The Adoration of the Name of Jesus)
140×110cm | 油彩・画布 | エル・エスコリアル修道院 |
本作を描いたエル・グレコ自身が、フェリペ二世に自薦したとされる逸話も残る代表作『イエスの御名の礼拝』。≪最後の審判≫的な主題を示している本作は、画面上部の天上には父なる神の威光により光り輝くイエスの御名、罪無き人々を天上へと導く天使、画面下部左には救済を求める人類と、後景に神へ祈りを捧げる預言者、画面下部右には地獄へと落とされる罪人が描かれた。ラテン十字に、ラテン語でイエスが救済者であることを示す≪IHS≫の文字は≪JHS(Jesus Hominum Salvator)≫を意味しており、このようなギリシア語、ラテン語の組み合わせ文字は、初期キリスト教以来、福音書写本を始めとする、いろいろな場所で多用されてきた。また、最近おこなわれた修復により、本作で使用された顔料の質が極めて高いことが判明した。引き伸ばされた人体構造を用い、躍動と色彩に満ちた天使や人物の表現はエル・グレコの大きな特徴であり、また最大の魅力であった。また天へ祈りを一心に捧げる敬虔な信者たちの姿は、エル・グレコが滞在していたトレドの知識人や民衆の信仰心を煽ることとなり、以後、多くの注文を受けることになった。
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