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羊飼いの礼拝 (Adoracion de los pastores) 1612-1614年
320×180cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
マニエリスム絵画最大の巨匠のひとりエル・グレコ晩年の代表作品『羊飼いの礼拝』。数多くの作品が現存するエル・グレコの作品は工房作の多い事でも知られているが、画面全てが画家の筆によるものとされる本作に描かれるのは、神の子イエスが降誕した夜、ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いのところへ大天使が降り救世主が生まれたことを告げられた後、急いでベツレヘムに向かい厩の飼葉桶に眠る降誕して間もない聖子イエスを礼拝するキリスト教美術における代表的な図像のひとつ≪羊飼いの礼拝≫で、特に晩年期のエル・グレコ様式に顕著に示される特徴、輝度の大きい光彩表現による激しい明暗対比や、極端に縦へ引き伸ばされた人体プロポーション、原色に近い強烈な色彩感覚などによって、現実世界を超越した超自然的な事象として、本場面を極めて象徴的に表現している。本作では降誕し威光を放つ幼子イエスを中心にし奥手へ聖母マリアと夫聖ヨセフの姿を、手前へ厩へ駆けつけた羊飼いを、そして上部に神の子イエスの降誕を祝福する天使たちが配されている。エル・グレコは工房作も含め本主題を描いた作品を幾つも手がけているが、内容、構図、構成、色彩、そして表現手法において最良の作品のひとつと位置付ける研究者も多い。
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