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ピエタ (Pietà) 1532-33年頃
159×245cm | 油彩・板(画布) | ルーヴル美術館(パリ) |
ロッソ・フィオレンティーノがフランス国王フランソワ1世の招きにより1530年から過ごしたフォンテーヌブロー時代の代表作『ピエタ』。フランス大元帥アンヌ・ド・モンモランシーのために制作された本作は、磔刑に処され死した受難者イエスの亡骸を抱き哀悼する姿≪ピエタ≫を描いたものであるが、その表現は極めて異質的であり画家の強烈な個性が存分に発揮されている。受難者イエスの土気色に染まった亡骸は≪死≫そのものであり、神性なる聖体としての表現を大きく逸脱している。またその体躯はマニエリスム様式特有の引き伸ばされた人体構図が用いられ、印象的な光彩表現が重なることによって、暗く沈んだ背景の中で際立って存在感を示している。他にも聖母マリアに見られる大げさな身振りやアリマタヤのヨセフ、マグダラのマリアの衣服の鮮烈で明瞭な色彩描写など画家の類稀な独創性と、独自の様式が随所に示されている。なお本作の制作年を画家の最晩年頃(1537-1540年)とする説も唱えられている。
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