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聖ヒエロニムスの幻視 (Visione di san Gerolamo)
1527年
343×149cm | Oil on panel | The National Gallery, London |
マニエリスム全盛期に燦然と輝く活躍を残した画家パルミジャニーノの幻影的で特異的な作品『聖ヒエロニムスの幻視』。西方教会四大博士の一人で、3世紀から4世紀にかけて数々の功績と伝説を残した聖書学者で教父でもある聖人、聖ヒエロニムスが苦行の末に視た、威光に包まれ現れる聖母子と、それを指す洗礼者聖ヨハネの姿の幻影を、パルミジャニーノは特異とも取れる独特の人体表現と構図で描いた。画面下部では朱色の衣を下半身に纏った半裸の聖者ヒエロニムスが、深い瞑想によって大地に倒れ意識が薄れゆく姿と、挑戦的とも取れる眼差しで作品を見る者と視線を交わしながら、父なる神の光に包まれる栄光の聖母子の、絶対的な存在感を指し示す洗礼者聖ヨハネの姿は、そのドラマティックな一瞬を目の当たりにすることの重大さを、観者に問いかけているかのようであり、うねりにも似た運動性と躍動に満ちている。これに対し画面上部に配されている、神々しく威厳に満ちた光に包まれる聖母マリアと幼子イエスの姿は、それまで描かれてきた典型的な聖母子の姿とは決定的に異なり、特に幼子イエスは、幼児とは思えないほど長身で端正なプロポーションと表情をしているのが、大きな特徴である。
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