Description of a work (作品の解説)
2011/01/30掲載
Work figure (作品図)
■ 

アルフォンス・ルロワの肖像

 1783年頃
(Portrait de médecin Alphonse Leroy)
73×93cm | 油彩・画布 | ファーブル美術館(モンペリエ)

フランス新古典主義の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドの代表的な肖像画作品のひとつ『アルフォンス・ルロワの肖像』。おそらくは同時期に制作された『ヘクトールの死を嘆くアンドロマケ』と共に同年のサロン(官展)へ出品された作品であると考えられている本作は、同時代の高名な医師(産婦人科医)で、ダヴィットの妻が出産した際の主治医でもあった≪アルフォンス・ルロワ≫氏をモデルとした肖像画である。画面中央に配される医師ルロワは、筆記具を手に自身の学術的論点をしたためる最中、ふとこちらに顔を向けた様子で描写されており、赤い部屋着を羽織り学問に没頭していたのであろうその仕草には非常に自然で私的な雰囲気が伝わってくる。また自然的でありながら医師ルロワの生命力を感じさせる視線と頬を紅潮させた真面目な表情には、対象の啓蒙主義者としての思慮深い性格と内面的傾向をよく捉えている。さらに医師ルロワの左肘(画面手前)の下に置かれた、古代ギリシアの医師で、医学会では医聖、医学の父と称されるヒポクラテスの婦人病に関する医学書や、画面左端に描かれる当時発明されたばかりのオイルランプは、目立ちすぎることなく対象の医学者としての勤勉さと(当時としての)近代性を演出することに成功している。また描写手法に注目しても、画家の肖像画表現の特徴である、茶褐色で対象を包み込むような背景描写における色調と明暗の絶妙な階調処理(※この処理は対象の存在を強調する効果も生み出している)や、鷹揚的ながら質感や動きの特徴を見事に捉えた衣服の皺の描写には、肖像画においても類稀な画才を発揮するダヴィッドの画家としての真価が示されている。


【全体図】
拡大表示
生命力を感じさせる医師ルロワの表情。同年のサロン(官展)へ出品された作品であると考えられている本作は、同時代の高名な医師(産婦人科医)で、ダヴィットの妻が出産した際の主治医でもあった≪アルフォンス・ルロワ≫氏をモデルとした肖像画である。



【医師ルロワの表情】
極めて写実的な対象描写。筆記具を手に自身の学術的論点をしたためる最中、ふとこちらに顔を向けた様子で描写されており、赤い部屋着を羽織り学問に没頭していたのであろうその仕草には非常に自然で私的な雰囲気が伝わってくる。



【極めて写実的な対象描写】
鷹揚的ながら質感や動きの特徴を見事に捉えた衣服の皺。古代ギリシアの医師で、医学会では医聖、医学の父と称されるヒポクラテスの婦人病に関する医学書や、画面左端に描かれる当時発明されたばかりのオイルランプは、目立ちすぎることなく対象の医学者としての勤勉さと(当時としての)近代性を演出することに成功している。



【特徴を見事に捉えた衣服の皺】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ