Description of a work (作品の解説)
2010/06/17掲載
Work figure (作品図)
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ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス


(Mars désarmé par Venus et les Grâces) 1822-24年
308×262cm | 油彩・画布 | ブリュッセル王立美術館

18世紀フランス新古典主義の最大の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドによる歴史がの大作『ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス』。皇帝ナポレオンの失墜によりフランス第一帝政時代の終焉し、王党派の復権に深く失望したダヴィッドが亡命したブリュッセル(ベルギー)の地で制作された本作は、凶暴で思慮に欠ける性格から神々の間でも距離を置かれていた軍神マルスが、愛と美と豊穣の女神であり、火と鍛冶の神ウルカヌスの妻としても知られるヴィーナス(ギリシア神話のアフロディーテと同一視される)から愛されたことで、己の武装を解除してしまうという神話≪ヴィーナスとマルス≫を主題とした作品である。ダヴィッドの作品中、神話を主題とした最後の大作としても知られる本作では、画面中央に観る者へ背を向けながら横たわる美の女神ヴィーナスが軍神マルスへ愛の象徴たる薔薇の冠を掲げており、軍神マルスは己の弓や盾、兜、そして剣などを三美神へと預けている。ヴィーナスとマルスの後方に配される三美神の中で真ん中に配される女神は黄金の杯へぶどう酒を注ぎ、マルスへ差し出すような仕草を示し、また画面下部では愛の神アモル(キューピッド)が軍神の甲懸(こうがけ。足の甲を保護する履物)を脱がせる姿が描き込まれている。極めて写実的ながら動きが少なく、水平が強調される堅牢で安定的な画面構成や主題展開はダヴィッドが確立した新古典主義の典型を明確に見出すことができ、やや形式的・様式的な美の側面が強く感じられるものの、画家の衰えぬ絵画への態度が明確に示されている。


【全体図】
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己の武具を渡す軍神マルス。ダヴィッドが亡命したブリュッセルの地で制作された本作は、凶暴で思慮に欠ける性格から神々の間でも距離を置かれていた軍神マルスが、愛と美と豊穣の女神であり、火と鍛冶の神ウルカヌスの妻としても知られるヴィーナスから愛されたことで、己の武装を解除してしまうという神話≪ヴィーナスとマルス≫を主題とした作品である。



【己の武具を渡す軍神マルス】
愛の証である薔薇の冠を掲げる女神ヴィーナス。画面中央に観る者へ背を向けながら横たわる美の女神ヴィーナスが軍神マルスへ愛の象徴たる薔薇の冠を掲げており、軍神マルスは己の弓や盾、兜、そして剣などを三美神へと預けている。



【薔薇の冠を掲げる女神ヴィーナス】
画面の水平を強調する三美神たち。極めて写実的ながら動きが少なく、水平が強調される堅牢で安定的な画面構成や主題展開はダヴィッドが確立した新古典主義の典型を明確に見出すことができる。



【画面の水平を強調する三美神たち】

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