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快楽の園 (The Garden of Earthly Delights) 1510-15年頃
220×389cm | Oil on panel | Museo del Prado, Madrid |
性的な秘儀を重視するアダム主義など異端的な作品であるとするか、人間の愚行と罪の告発や断罪を目的とした作品であるとするか、今も作品の解釈が議論され続けている後期ゴシックを代表する画家ヒエロニムス・ボス屈指の作品『快楽の園』。16世紀のスペイン国王フェリペ2世によりコレクションされた本作には、閉扉時に旧約聖書において父なる神が世界を創造する場面≪天地創造≫の一場面が、開扉時には伝統的に左扉部分となる≪天国≫にはアダムとエヴァによる原罪が、中央には淫欲の罪を表すとされる≪現世≫が、右扉部分となる≪地獄≫には淫欲の罪を犯し肉欲に支配され人間が堕落する様子が描かれているとされている。祭壇画の閉扉時はグリザイユ(と呼ばれるモノトーンの描写方法)によって≪世界の創造≫が描かれ、天地創造の3〜4日目を表し、海と陸に隔てられた地上には生物がまだ存在していない。また内部の左扉に描かれるのは、アダムとエヴァによる原罪を表すと言われている。この中央部分『快楽の園』は一糸纏わぬ男女の入り乱れる姿から、≪淫欲≫の罪を表していると推測されている。内部の左扉には、淫欲の罪を犯し肉欲に支配され人間が堕落する様子、『音楽地獄』が描かれており、この地獄部分にはヒエロニムス・ボス作品の特徴と言える、幻想的な奇怪生物が見事に表現されている。
関連:快楽の園(閉扉時) -世界の創造-
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