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地上の楽園・祝福された者の楽園への上昇 1500-04年頃
(The Earthly Paradise・The Acsension of the Blessed)
各87×39cm | 油彩・板 | パラッツォ・ドゥカーレ(ヴェネツィア) |
画家ヒエロニムス・ボス作『地上の楽園・祝福された者の楽園への上昇』。『地獄・呪われた者の墜落』と共に描かれたとされる本作の制作意図や目的は不明であり、今なお研究が続けられているも、≪最後の審判≫や≪キリストの復活≫を中央に配した祭壇画の両翼であるとする説や、≪地上の楽園、祝福された者の楽園への上昇、地獄、呪われた者の墜落≫の四場面のみで構成される二連祭壇画とする説が現在では一般的であるほか、一部の研究者から当時の思想家による≪終末論≫との関連性も指摘されている。おそらくは旧約聖書を典拠に父なる神が最初の七日間で形成した世界を、独自解釈によって表現した≪地上の楽園≫と、天使たちによって(幸福が)約束された地へ導かれる場面≪祝福された者の楽園への上昇≫のニ場面が描かれる本作は、いずれもヒエロニムス・ボスの思想的表現が認められ、特に≪地上の楽園≫画面下部に描かれる起立(又は楽園への上昇の説得)を促す天使を完全に信用していない人間の未熟な精神性(信仰心)や、≪祝福された者の楽園への上昇≫での未知なる地への恐れを抱く人間の表現にそれが示されている。また≪祝福された者の楽園への上昇≫に描かれる楽園へと続く円筒形の光のトンネルの図像的表現も(楽園を天国と解釈する場合、通常、門≪天国への入門≫として描かれる為)本作において特筆すべき点のひとつである。
関連:『地獄・呪われた者の墜落』
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