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怠け者の天国 (The Land of Cockaigne) 1567年
52×78cm | 油彩・板 | アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン) |
初期ネーデルランド絵画最後の巨匠ピーテル・ブリューゲル(父)を代表する寓意的作品のひとつ『怠け者の天国』。本作に描かれるのは、怠惰と暴飲暴食を目的とした架空の(又は堕落的理想の)世界とそこに存在する住人の様子である。この何もせずとも美食にありつける飽食の世界の住人は全て怠け者として、すなわち僧侶(又は学者)、兵士、農民は働くことなく、ただ寝そべるのみである。中世以来、逸楽郷の世界観を表現する主題は一般的なものとなっていたが、本作では本主題の登場人物のその後、つまり偶者は後に懲罰を受ける運命にあることを示さずに、人物の滑稽な姿を重視して描かれている。また、このような人間の怠惰な一面が表現される本作には、精神性の不毛の象徴として≪食べかけの卵≫が描かれるほか、ブリューゲルの代表作『ネーデルランドの諺』にも示されている≪菓子の屋根(豊富で有り余ることを意味する)≫、≪腹を突き刺された豚(既に事は決められていることを意味する)≫など様々な寓意が散りばめられていることも本作の注目すべき点のひとつである。
関連:ピーテル・ブリューゲル作『ネーデルランドの諺』
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