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牛群の帰り (The Return of the Herd) 1565年
117×159cm | 油彩・板 | ウィーン美術史美術館 |
季節ごとの農民の生活を克明に描いた連作月暦画の1点『牛群の帰り』。ブリューゲルの友人でありアントウェルペンの裕福な金融商人ニコラース・ヨンゲリンクの邸宅の装飾画として制作された連作月暦画は2ヶ月毎の生活を描いた合計6点からなる作品群の1点だと推測されている本作は、収穫時期が過ぎた10月・11月の冬にそなえ牧草地で蓄える家畜(牛)や農民らを描いた作品であると考えられている。連作月暦画に共通する石膏の下地を生かした薄塗りの風景描写は、本作においる最も特徴的な描写技法のひとつであり、一連の作品群の中でもブリューゲル独特の抒情に富んだ雰囲気が見事に反映された特筆に値すべき出来栄えを示している。また輪郭線の強い牧草地から帰路につく家畜と農民らの生活感に溢れる描写や晩秋を感じさせる寒々しい薄暗い場面表現は、ブリューゲルの作品世界へと誘う重要な要素として、観る者に強い印象を与えている。
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