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イカロスの墜落のある風景 1556-1558年頃
(Landscape with the Fall of Icarus)
73.5×112cm | 油彩・板(画布) | ブリュッセル王立美術館 |
巨匠ピーテル・ブリューゲル初期の代表的な作品『イカロスの墜落のある風景』。古典神話を題材とした現存する画家唯一の作品としても知られる本作に描かれるのは、オウィディウスの転身物語より、クレタ島の王ミノスに仕えた伝説的な名工ダイダロスが、自身の裏切りによってミノス王に捕らえられている息子イカロスの救出を目論み、息子イカロスに蝋(ろう)と羽で拵えた翼を与え空から脱出を試みるも、脱出途中で興奮した息子イカロスが空高く舞い上がったために太陽の熱で蝋(ろう)が溶け、海へと墜落して死してしまう≪イカロスの墜落≫の場面で、イタリアでの修行からの帰国直後頃に描かれたと考えられている。本作では墜落するイカロスの扱いは非常に小さく、画面右部の帆船の下に下半身だけが描かれ、画面の大部分は農耕に従事する民の姿とブリューゲル初期様式の特徴である高位置の視点による風景描写によって占められているほか、構成はほぼ忠実に転身物語の記述に従い描かれているも、水平線に近い低い位置に描かれる太陽に相違が認められる。また一部からは、老農民の姿に「人が死しても、鋤は休まぬ」というネーデルランド地方に伝わる諺の解釈が指摘されている。
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