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切った梨を持つ聖母子 (Maria mit der angeschnittenen)
1512年
48×37cm | Oil on panel | ウィーン美術史美術館 |
デューラーはその生涯に幾つかの聖母子像を手がけているが、現在、ウィーン美術史美術館に所蔵されるこの『切った梨を持つ聖母子』は、画家の力強い創造力が生み出した最も代表的な聖母子像作品であろう。黒色の背景の中、黄色いヴェールと青い衣をまとった聖母マリアが、切った梨を手にする幼児キリストを抱く姿を描いた本作は、背景と描かれる人物の高いコントラストによって、決して下劣ではない、ある種の神格性を持った輝きを放ち、特にデューラーのヴェネツィア留学の成果が表れる幼児キリストの透明感と躍動感に富んだ表現は特筆に値する。本作の最も印象的に見せている表現のひとつとして挙げられるのが、この暗い背景に浮かぶ黄色いヴェールと青い衣をまとった聖母マリアの衣服である。また。キリストの局部を隠している小さなヴェールは、デューラーの手によって描かれたものではなく、完成後、何らかの理由により付け足されたものとされる。
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