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茨の冠の祝祭 (Das Rosenkranzfest) 1506年
162×194.5cm | Oil on panel | National Gallery, Prague |
デューラーが二度目のヴェネツィア留学中、サン・バルトロメオ聖堂のための祭壇画を制作するため、ヴェネツィア在住のドイツ商人が集まり、共同で同郷人であるデューラーに依頼し、手がけられた作品『茨の冠の祝祭』。本作の主題は玉座に鎮座する聖母マリアと幼子キリストを中心に聖人たちを配する≪聖会話≫で、聖母マリアは左手で皇帝マクシミリアン1世に冠を与えながら、自身も上空の天使より冠を受けている。また幼子キリストの下部では楽器を手にし、場面に相応しい音楽を奏でる天使の姿を始め、聖母子への捧げ物などがデューラーの高度な細密描写によって描かれている。遠近法によって巧みに描かれる背景や、各登場人物の精神性に富む繊細な表現など、画家の成熟しつつある技量がよく窺えるほか、晴天に染まる青い空や聖母の着衣の濃紺、皇帝マクシミリアン1世と教皇ユリウス2世が着衣する豪華な赤色の衣服など、配色にもヴェネツィアらしい大胆かつ豊かな色彩が使用されいている。なお画面右後方部分に描かれる銘文(画家のサインなどが記された文章)を手にする男性は、その風貌的特長からアルブレヒト・デューラー本人であることが確認されている。
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