Description of a work (作品の解説)
2004/10/22掲載
Work figure (作品図)
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楽園追放

 (Cacciata paradiso terrestre) 1425-1427年頃
208×88cm | フレスコ | カルミネ聖堂ブランカッチ礼拝堂

あまりの神の怒りの大きさに両手で顔を覆うアダムや、悲嘆に暮れるエヴァの表情など、稀な構図で描かれたフィレンツェのカルミネ聖堂ブランカッチ礼拝堂連作壁画のひとつ『楽園追放』。主題は旧約聖書創世記から禁断の知恵の実を口にし、父なる神の怒りに触れ楽園を追い出されたアダムとエヴァを描く≪楽園追放≫で、父なる神の厳しい断罪を受け絶望に打ちのめされるアダムとエヴァの迫真の表現が見事な作品だが、遠近法で描かれる背景の処理や明暗法で描かれる人体の構造的描写など古典美への回帰を感じさせるマザッチョの美術的思想など、その他にも特筆する点は多々ある。特にエヴァに関してはギリシア芸術による≪恥じらいのヴィーナス≫を手本とした14世紀の作品の影響も認められており、古典芸術とルネサンス思想を独自に解釈した新たなる融合が試みられている。しかし残念ながら本作は長きにわたる年月によって遜色が激しく、汚れと色褪せによって本場面の表現が暗く沈み、最近の洗浄により青灰色の下塗り層が判明するも、当時の色彩を完全に再現するには至っていないが、なおそれでもブランカッチ礼拝堂連作壁画のひとつとして描かれた『貢ぎの銭』と共に、フレスコ画の最高傑作として現在もその存在価値を十二分に示している。


【全体図】
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あまりの神の怒りの大きさに、思わず両手で顔を覆うアダム。制作場所がブランカッチ礼拝堂の壁面なので、フレスコという極めて修正の難しい画材で描かれているが、明暗法で描かれる人体の構造的描写は見事の一言に尽きる。



【両手で顔を覆うアダム】
悲嘆と絶望に暮れる表情を見せるエヴァ。本作が完成をみてから500年以上の月日が経っているので、画材の性質上著しい劣化が認められるが、迫真に迫るその表現は色褪せない。



【悲嘆と絶望に暮れるエヴァ】

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