Description of a work (作品の解説)
2008/12/31掲載
Work figure (作品図)
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自画像

 (Autoritratto) 1565-70年頃
86×65cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

ルネサンス期ヴェネツィア派最大の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオ最晩年の傑作『自画像』。本作は1565年から1570年頃に制作されたと推測されているティツィアーノ最晩年期の自画像作品である。画家は本作を手がける以前にも同画題『自画像(ベルリン美術館所蔵)』を手がけているが、本作からは画家の晩年期の心情的変化を顕著に感じることができる。画面中央やや上部へほぼ真横の視点で描かれるティツィアーノ自身の表情は年老いた者の瞳とは思えないほど生命力に漲っており、その視線の先は画家が辿り着いた絵画の極致を見通しているかのようである。またその襟首には微かに白い衣服が、胸部には二重金の鎖が控えめに配されている。そして本作に描かれるティツィアーノの右手には絵筆が握られており、画家としての自身の明確な意思とその宣言を見出すことができる。以前に制作された『自画像』では画家としての尊大な態度や内面に漲る野心を感じさせるものの、本作の装飾性を極力廃した静謐で古典的な自画像表現には老いた画家の絵画に対する(そして画家としての)実直な心情を見出すことができる。さらに≪色彩の錬金術≫と呼ばれた画家の他の作品と比較すると本作に多用される黒色の深い精神性と、それと絶妙に対比する肌の色や二本の黄金の鎖、白い衣服などの色彩描写は特に白眉の出来栄えであり、画家自身の内面を浮かび上がらせる光源処理と共に、今も観る者を魅了し続ける。ティツィアーノは生涯において100点以上の肖像画を手がけているが、本作は紛れも無くその頂点に位置する最高傑作のひとつであるほか、ティツィアーノの晩年期における精神状態を考察する上でも特に重要視されている。

関連:ベルリン国立美術館所蔵 『自画像』


【全体図】
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生命力を感じさせる画家の瞳。画面中央やや上部へほぼ真横の視点で描かれるティツィアーノ自身の表情は年老いた者の瞳とは思えないほど生命力に漲っており、その視線の先は画家が辿り着いた絵画の極致を見通しているかのようである。



【生命力を感じさせる画家の瞳】
控えめに描かれる二重の金の鎖。以前に制作された『自画像』では画家としての尊大な態度や内面に漲る野心を感じさせるものの、本作の装飾性を極力廃した静謐で古典的な自画像表現には老いた画家の絵画に対する(そして画家としての)実直な心情を見出すことができる。



【控えめに描かれる二重の金の鎖】
画家としての自身を象徴する右手に握られた絵筆。本作に多用される黒色の深い精神性と、それと絶妙に対比する肌の色や二本の黄金の鎖、白い衣服などの色彩描写は特に白眉の出来栄えであり、画家自身の内面を浮かび上がらせる光源処理と共に、今も観る者を魅了し続ける。



【画家としての自身を象徴する絵筆】

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