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聖ヘレナの夢 (Visione di sant' Elena) 1580年頃
166×134cm | 油彩・画布 | ヴァティカン宮美術館 絵画館 |
肖像画以外で描かれることは非常に珍しいヴェロネーゼによる単身人物像の傑作『聖ヘレナの夢』。本作は、最初のキリスト教徒皇帝コンスタンティヌス大帝の母聖へレナが体験した天使が十字架を持って現れる幻視の場面≪聖へレナの夢≫を主題に制作された作品で、一説にはヴェロネーゼの妻であるエレーナ・バティーレのために描かれたとされている。ヴェロネーゼはラファエロの素描に基づく版画の構図で同主題を20年以上前にも描いているが(現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵している)、本作ではマニエリスム的とも捉えることができる華奢な人物像に、晩年の特徴であるメランコリックな感情表現を用いて描いており、聖ヘレナの王冠を頂点とし、右部の十字架を持つ天使と、左部へと流れる優雅な聖ヘレナの下半身の織り成す三角形の構図は空間と見事に調和を見せ、自然主義を感じさせる正確な描写と共に、ヴェロネーゼが表現し続けた美の集大成のひとつを示している。
関連:ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵『聖へレナの夢』
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