Description of a work (作品の解説)
2008/08/18掲載
Work figure (作品図)
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羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン


(Apollon révélant sa divinite à la bergère Issé) 1750年
129×157.5cm | 油彩・画布 | トゥール美術館

盛期ロココ美術随一の巨匠フランソワ・ブーシェの最も得意とした神話画の代表的作例のひとつ『羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン』。本作は古代ローマの最も著名な詩人のひとりオウィディウスによる傑作≪転身物語(変身物語)≫の挿話から創作されたオペラ≪イセ≫に典拠を得てブーシェが制作した作品で、おそらくはパリで大成功を収めたオペラ≪イセ≫がヴェルサイユ宮殿でも上演されたのを期に、フランス国王ルイ15世の宮殿のための装飾画のひとつとして制作された作品であると推測されている。画面中央には(転身物語では)マカレウスの娘とされる≪イセ≫に対して、主神ゼウスと巨人族の娘レトとの間に生まれたオリュンポス十二神の1柱≪アポロン≫が、己が神であること明かしている(示している)姿が描かれている。その周囲には天使らが螺旋状に舞っており、その手にはアポロンのアトリビュートである松明や竪琴、四頭立ての戦車の手綱などが握られている。また画面下部左側に配される泉の精ナイアスが二人の劇的な瞬間に目を向けている。本作で特筆すべき点は、ブーシェ独特の甘美性が漂う優美で繊細な表現と、登場人物の構成の巧さにある。主役となるアポロン自らが光源となっているかのように明瞭な光に包まれ、イセに対する感動的な告白を盛り上げている。またやや演劇的な人物らの姿態や画家の得意とした軽やかな色調、鬱蒼とした森の中で突如、夢の中に迷い込んだかのような非現実的な雰囲気の表現なども優れた出来栄えを示している。さらに全体で逆Z字を描く登場人物のリズミカルな配置やアポロンの背後の扇状の空間表現は、絵画としての装飾性をより強調する効果を生み出しており、画家の卓越した才能を存分に感じることができる。


【全体図】
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イセに己が神であることを示すアポロン。本作は古代ローマの最も著名な詩人のひとりオウィディウスによる傑作≪転身物語(変身物語)≫の挿話から創作されたオペラ≪イセ≫に典拠を得てブーシェが制作した作品である。



【イセに己が神であることを示すアポロン】
アポロンの顕示に驚くイセの優美な姿。おそらくはパリで大成功を収めたオペラ≪イセ≫がヴェルサイユ宮殿でも上演されたのを期に、同宮殿のための装飾画のひとつとして制作された作品である本作で特筆すべき点は、ブーシェ独特の甘美性が漂う優美で繊細な表現と、登場人物の構成の巧さにある。



【アポロンの顕示に驚くイセの優美な姿】
二本の松明を手にする天使。画面中央には≪イセ≫に対して、≪アポロン≫が、己が神であること明かしている(示している)姿が描かれ、周囲には天使らが螺旋状に舞っており、その手にはアポロンのアトリビュートである松明や竪琴、四頭立ての戦車の手綱などが握られている。



【二本の松明を手にする天使】
二人の劇的な瞬間を見つめる泉の精ナイアス。やや演劇的な人物らの姿態や画家の得意とした軽やかな色調、鬱蒼とした森の中で突如、夢の中に迷い込んだかのような非現実的な雰囲気の表現なども優れた出来栄えを示している。



【二人を見つめる泉の精ナイアス】

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