Description of a work (作品の解説)
2008/01/17掲載
Work figure (作品図)
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ヴィーナスの勝利

 (Triomphe de Vénus) 1733年頃-1740年
130×162cm | 油彩・画布 | ストックホルム国立美術館

ロココ美術の大画家フランソワ・ブーシェを代表する神話画作品のひとつ『ヴィーナスの勝利』。1733年頃に制作を開始したと推測されるが、サロンへは1740年に出品された作品である本作に描かれるのは、画家がその生涯の中で最も多く手がけた画題のひとつである女神≪ヴィーナス(ギリシア神話のアフロディーテと同一視される)≫の司る≪愛≫と≪美≫が勝利を収めた場面である。愛と美と豊穣の女神ヴィーナスは、世界を統べた最初の神々の王ともされている天空神ウラノスが(子息クロノスによって)切り落とされた性器から海へと滴り落ちた精液が作り出した泡から生まれたとされており、ヴィーナスにとって海は自分が誕生した重要な場所である。本作では画面中央やや右寄りの岩に腰を下ろした、一際肌が白く輝くヴィーナスが下方へ視線を向けており、その背後ではニンフが海の宝石である真珠をヴィーナスに差し出している。さらに画面下部では巨大魚に身体を預けながら複数のニンフたちがその身を捩じらせている。本作に描かれるヴィーナスやニンフらの裸婦表現は、いずれも理想化されない現実的な官能性に溢れており、観る者を愛と美が勝利した甘美な世界へと誘う。またヴィーナスという画題やその官能的表現は元より、隆々とした肉体美を見せる裸の男たちの逞しい躍動感や、天空を舞う複数のアモル(ギリシア神話ではエロス、キューピッドとも呼ばれる)たちの軽やかな運動性、光の輝きに満ちた明瞭で対比の大きい色彩表現などは盛期ロココ様式の典型であり、本作はそれら様式の特徴が顕著に示されたブーシェの代表的な作例としても広く知られている。


【全体図】
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視線を落す愛と美と豊穣の女神ヴィーナス。本作に描かれるのは、画家がその生涯の中で最も多く手がけた画題のひとつである女神≪ヴィーナス(ギリシア神話のアフロディーテと同一視される)≫の司る≪愛≫と≪美≫が勝利を収めた場面である。



【視線を落す愛と美の女神ヴィーナス】
理想化されない現実的な官能性に溢れた裸婦表現。。本作に描かれるヴィーナスやニンフらの裸婦表現は、いずれも理想化されない現実的な官能性に溢れており、観る者を愛と美が勝利した甘美な世界へと誘う。



【現実的な官能性に溢れた裸婦表現】
軽やかに天空を舞うアモルたち。隆々とした肉体美を見せる裸の男たちの逞しい躍動感や、天空を舞う複数のアモルたちの軽やかな運動性、光の輝きに満ちた明瞭で対比の大きい色彩表現などは盛期ロココ様式の典型である。



【軽やかに天空を舞うアモルたち】

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