Description of a work (作品の解説)
2008/01/16掲載
Work figure (作品図)
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食前の祈り

 (Bénédicité) 1740年頃
49.5×39.5cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀ロココ様式時代のフランス絵画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダン代表的な風俗画作品のひとつ『食前の祈り』。対の作品となる『働き者の母親』と共に1740年のサロンに出品され、同年ヴェルサイユ宮殿で当時のフランス国王ルイ15世に献上された本作は、17世紀フランドル絵画などで盛んに制作された民衆階級の健全な美徳を表す風俗的画題≪食前の祈り≫を描いた作品である。本作では食事の用意をする母親がその手を止め、朱色の帽子を被り小さな椅子に座る幼い娘に視線を向け、食前の祈りを捧げるよう食事前の態度を咎めている。そして二人の間(食卓の奥)では、おそらく幼い娘の姉であろう少女が母親同様、行儀良く振る舞いながら妹(幼い娘)の方を向き、彼女の祈りが終わるのを待っている。本作に描かれる何気ない日常風景の中に、当時のフランスの厳格な生活態度やその姿勢が示されている。また本作が描かれた1740年は凶作であったことが知られており、研究者からは、凶作の中でも食事を取れることや、生きることそのものに対する切実な感謝の念が込められているとの指摘もされている。画家が手がけた数多くの風俗的作品の中でも、とりわけ著名な作品である本作の柔和な光の加減や物静かで優しい空気感、落ち着いた清潔感を感じさせる色彩描写は特に秀逸の出来栄えであり、観る者を自然と絵画内の生活世界へと誘う。教訓的な画題を描きながらも、その中に絵画作品としての確固たる魅力が存分に表現されるシャルダンの風俗画作品は、現在、やや軽視傾向にあるロココ時代のフランス絵画の中でも、ヴァトーと並び一際高い評価を受けている。

関連:対画『働き者の母親』


【全体図】
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幼い娘の食事前の態度を咎めている母親。対の作品となる『働き者の母親』と共に1740年のサロンに出品され、同年ヴェルサイユ宮殿で当時のフランス国王ルイ15世に献上された本作は、民衆階級の健全な美徳を表す風俗的画題≪食前の祈り≫を描いた作品である。



【娘の食事前の態度を咎めている母親】
母親に食事前に態度を咎められる幼い娘。本作の柔和な光の加減や物静かで優しい空気感、落ち着いた清潔感を感じさせる色彩描写は特に秀逸の出来栄えであり、観る者を自然と絵画内の生活世界へと誘う。



【食事前に態度を咎められる幼い娘】
食卓に並べられる食事とその前に座る姉娘。本作が描かれた1740年は凶作であったことが知られており、研究者からは、凶作の中でも食事を取れることや、生きることそのものに対する切実な感謝の念が込められているとの指摘もされている。



【食卓に並べられる食事と姉娘】

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