2007/12/10掲載
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赤エイ(赤えいと猫と台所用具)(Raie) 1727-1728年頃114.5×146cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)
歯を見せ笑うかのような赤エイの口元。一見地味な印象すら受ける全体の抑制的な色彩描写の中での、赤エイの歯を見せ笑うかのような口元や切り裂かれた腹から見える血の鮮明な赤色と、赤エイの光の当たる部分でのぬめりを感じさせる白色の描写は観る者を強く惹きつける。
【歯を見せ笑うかのような赤エイの口元】
台所に置かれる魚や牡蠣などの魚介類。王立絵画・彫刻アカデミーの入会選考作品として提出、同日異例の早さで正式な会員として認められた作品としても名高い本作は赤エイや牡蠣、細長い葱、食器などが置かれる台所と、そこで一匹の猫が毛を逆立て踏ん張る姿を描いた≪静物画≫である。
【台所に置かれる魚や牡蠣】
机上に敷かれる白布と置かれるナイフ。当時、肖像画家として絶大な人気を博していた画家ニコラ・ド・ラルジリエールがこの作品を初見した時、優れたフランドルの画家の手による作品であると見間違え、賞賛したという逸話(17世紀にフランドルの画家が制作した静物画は特に優れていた)も残されている。
【机上に敷かれる白布と置かれるナイフ】
毛を逆立てる猫の激情性。観る者を圧倒する静物の写実的描写、牡蠣や食器の硬質性と白布の柔軟性の対比的表現、画面全体に漂う静謐な雰囲気の中で際立つ毛を逆立てる猫の激情性、堅牢ながら絶妙に静動性の調和が計算された赤エイを頂点とする構図や画面構成などは特筆に値する出来栄えである。
【毛を逆立てる猫の激情性】 |