Description of a work (作品の解説)
2007/12/09掲載
Work figure (作品図)
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かんぬき(閂)

 (Verrou) 1780-84年
73×93cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

ロココ美術の大画家ジャン・オノレ・フラゴナール晩年の代表作『かんぬき(閂)』。地位は低いものの裕福であり、熱心な週集会であった貴族ドゥ・ヴェリ侯爵の依頼により制作された本作に描かれるのは、部屋の中で若い男が嫌がる素振りを見せる若い女を抱き寄せながら、扉のかんぬき(扉を開閉できないようにする為の金具)をかける姿である。本作の明暗対比の大きい劇的な光の描写や、絹や金属的な光沢感のある衣服の表現、フラゴナールが好んで使用した赤色、黄色、白色の三色で構成される色彩など晩年期の画家の特徴が良く表れている本作で最も注目すべき点は、この≪かんぬき(閂)≫という画題で表現された性的な暗喩にある。若い男は左腕でしっかりと若い娘を力強く抱き寄せながら、この情事に他の者の邪魔が入らぬよう閂に右手を伸ばしている。一方、質の良さを感じさせる艶やかな光沢を放つ黄色地の衣服に身を包む若い女は、男の顔を押し退けるように(男の顔へ)手を掛け、顔を仰け反らせている。この背徳的で堕胎的な秘密の情事とその行為を、画家はスポットライト的に射し込む強烈な一筋の光で照らすことによって、まざまざと浮かび上がらせている。この大胆かつダイナミックな登場人物の躍動性(運動性)や、硬質的で冷麗な描写は本作に表現される人間(男)の性的欲求とそれに準ずる行動、さらにそこに垣間見る人間の衝動性を見事に表している。また散らかった室内や倒れる花瓶なども、この性的欲求から行われる暴力的な行為・行動をより強調している。なお本作は一部の研究者から、かつて画家の作品とされていたが、現在では画家の妻の妹で弟子でもある(また愛人であったとする説もある)マルグリット・ジェラールが制作したと考えられている『盗まれた接吻』の対画であるとの指摘もされている(ただしこの指摘には否定的な意見も多い)。

関連:マルグリット・ジェラール作 『盗まれた接吻』


【全体図】
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嫌がり抵抗する若い女を抱き寄せる男。地位は低いものの裕福であり、熱心な週集会であった貴族ドゥ・ヴェリ侯爵の依頼により制作された本作に描かれるのは、部屋の中で若い男が嫌がる素振りを見せる若い女を抱き寄せながら、扉のかんぬき(扉を開閉できないようにする為の金具)をかける姿である。



【嫌がり抵抗する若い女を抱き寄せる男】
かんぬき(閂)へと伸ばされる男の右手。この背徳的で堕胎的な秘密の情事とその強引な行為を、フラゴナールはスポットライト的に射し込む強烈な一筋の光で照らすことによって、まざまざと浮かび上がらせている。



【かんぬき(閂)へと伸ばされる男の右手】
艶やかな光沢を放つ黄色地の衣服。本作の大胆かつダイナミックな登場人物の躍動性(運動性)や、硬質的で冷麗な描写は本作に表現される人間(男)の性的欲求とそれに準ずる行動、さらにそこに垣間見る人間の衝動性を見事に表している。



【艶やかな光沢を放つ黄色地の衣服】

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