Description of a work (作品の解説)
2008/04/15掲載
Work figure (作品図)
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ヴィーナスと時の擬人像

 1754-57年頃
(Allegoria con Venere e il Tempo)
292×190cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

18世紀イタリア絵画最大の巨匠ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロを代表する神話画作品のひとつ『ヴィーナスと時の擬人像(ヴィーナスと時の寓意像)』。おそらくはヴェネツィアの有力一族コンタリーニ家が所有していた邸宅の装飾画のひとつとして制作された(又はコンタリーニ家に子息が誕生したのを記念して制作されたとも考えられている)本作に描かれるのは、天空神ウラノスの切り落とされた生殖器から滴る精液が海に落ちた時に、その泡から生まれたとされる愛と美と豊穣を司る女神≪ヴィーナス≫と、天空神ウラノスと大地の女神ガイアの間に生まれた6番目(末弟)の巨人族で、時の翁(時の擬人像)としても知られているサトゥルヌスである(※サトゥルヌスは天空神ウラノスの生殖器を切り落としたクロノスと同一視されている)。天井画として制作されている為に、観る者が見上げた場合を想定して画面が展開される本作では、女神ヴィーナスにより多くの光を、時の擬人像により深い陰影を描き込むことによって、空間を強調するイリュージョン的な視覚的効果を与えている。この錯覚的な表現手法はティエポロの最も特徴的な空間構成のひとつであり、本作はそれを感じるのに最も適した作品のひとつでもある。画面中央では女神ヴィーナスが右腕に黄金の瓶を抱え、己が生んだ赤子に手を伸ばしている。年老いた時の擬人像は女神ヴィーナスが生んだ赤子を地上へ連れて行く為に抱きかかえ、女神へと視線を向けている。一部の研究者や批評家は、この老いた時の擬人像はヴェネツィアの没落を意味していると指摘している。また画面上部には三美神と二羽の(番の)鳩が描き加えられており、画家の創造力の高さをうかがい知ることができる。本作は色彩描写においても、桃色、黄橙色、白色の三色で構成される女神ヴィーナスの衣服と、時の擬人像が身に着ける緑味が加わる青地の衣服の対比、そしてさらにその下方に描かれるキューピッドの濃赤の矢筒の配色などは特に注目すべき点であるほか、画面上空に広がる(夜明けを思わせる)霊妙な青空の表現も秀逸の出来栄えを示している。


【全体図】
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右腕に黄金の瓶を抱え、己が生んだ赤子に手を伸ばす美の女神ヴィーナス。本作は、おそらくヴェネツィアの有力一族コンタリーニ家が所有していた邸宅の装飾画のひとつとして制作された作品である(又はコンタリーニ家に子息が誕生したのを記念して制作されたとも考えられている)。



【美の女神ヴィーナスの艶やかな表現】
女神ヴィーナスの子供を抱きかかえる時の擬人像。天井画として制作されている為に、観る者が見上げた場合を想定して画面が展開される本作では、女神ヴィーナスにより多くの光を、時の擬人像により深い陰影を描き込むことによって、空間を強調するイリュージョン的な視覚的効果を与えている。



【女神の子供を抱える時の擬人像】
画面上部に配される二羽の(番の)鳩。桃色、黄橙色、白色の三色で構成される女神ヴィーナスの衣服と、時の擬人像が身に着ける緑味が加わる青地の衣服の対比、そしてさらにその下方に描かれるキューピッドの濃赤の矢筒の配色などは特に注目すべき点である。



【画面上部に配される二羽の(番の)鳩】

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