Description of a work (作品の解説)
2009/01/15掲載
Work figure (作品図)
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愛の調べ(愛の音階)

 (La game D'Amour) 1715年頃
51×60cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

初期ロココ様式を代表する画家アントワーヌ・ヴァトーの典型的な作例のひとつ『愛の調べ(愛の音階)』。制作年代には諸説唱えられているものの、一般的には1715年頃に手がけられたと推測される本作は、若い男女の初々しい愛の情景を描いた作品である。画面中央にはギターらしき楽器を手にした、まるで役者のような派手な衣服に身を包む若い男が配され、初老の男(又は古代ローマの女神ケレス)の胸像の下で音楽を奏でようとしている。男の視線は画面左下で大地に座る若い女が広げる楽譜へと落とされており、これから奏でようとしている曲が2人の関係性を物語っている。画面奥へと顔が向けられているため、その表情を窺うことができない艶やかな衣服に身を包む若い女性は、優雅に楽譜を摘みながら若い男へと視線を向けている。さらに中景として画面右側には2組の男女と1組の母子が配されており、本作の牧歌的かつ穏やかな情景をより強調している。そしてその奥には夕暮れを思わせるように幾許か赤味の差す空が広がっており、前景(画面左上)の濃密に茂る樹木と見事な対比を示すかのように、空間的な開放感を生み出している。本作の表現手法に注目しても、重厚的ながらある種の軽やかさも同時に感じさせるヴァトー独特の筆触による豊潤で多彩な色彩の描写や斜傾的な場面構成、光と陰影の光度を帯びた明確な対比などは秀逸の出来栄えを示しており、その後、ヴァトーが手がけることになる一連の代表作を予感させる。なお本作に描かれる仲睦まじい男女や中景の複数人による男女の組み合わせはその後の作品にも度々登場することになる。


【全体図】
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女が持つ楽譜へと視線を落す若い男。画面中央にはギターらしき楽器を手にした、まるで役者のような派手な衣服に身を包む若い男が配され、初老の男(又は古代ローマの女神ケレス)の胸像の下で音楽を奏でようとしている。



【女が持つ楽譜へと視線を落す若い男】
若い男へと視線を向ける女の後ろ姿。奥へと顔が向けられているため、その表情を窺うことができない艶やかな衣服に身を包む画面左下の若い女性は、優雅に楽譜を摘みながら若い男へと視線を向けている。



【若い男へと視線を向ける女の後ろ姿】
画面中景に描かれる複数の男女。画家独特の筆触による豊潤で多彩な色彩の描写や斜傾的な場面構成、光と陰影の光度を帯びた明確な対比などは秀逸の出来栄えを示しており、その後、ヴァトーが手がけることになる一連の代表作を予感させる。



【画面中景に描かれる複数の男女】

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